あなたはこの問いにどう答えるだろうか。素晴らしい選手たちがたくさんいるなかで1人だけ選ぶのは難しい。3人選んでいいならクリスティアーノ・ロナウド、リオネル・メッシ、そしてアレックス・ハンターと私は答える。アレックス・ハンターは『FIFA 19』の「The Journey」モードに登場するキャラクターで、『FIFA 17』から搭載された「The Journey」の主人公を務めてきた。新人時代の不安や焦燥、努力の末手にした栄光と挫折、そして復活と、1人のサッカー選手、いや人間として彼のことをゲームプレイを通じて私はよく知っている。アレックス・ハンターというサッカー選手は確かにここにいるのだ。
アレックス・ハンターの物語、ここに完結
「The Journey」はいわゆるストーリーモードで、トレーニングと試合を繰り返しサッカー選手としてのキャリアを築いていく。試合から試合の間にはイベントシーンが数多く用意され、そこでプレイヤーの選んだ結果がストーリーに影響を及ぼす。選手の不安や野心など選手個人の心境が細やかに描写されることはもちろん、家族との心温まるやりとりや、ライバル選手と火花を散らすシーンもある。代理人と契約について口論する生々しい場面や、活躍によってTwitterのフォロワー数が増えるなど現代に生きるサッカー選手のシミュレーターとして実にリアルだ。『FIFA 19』の「The Journey」では、アレックス・ハンターのほかに、友人のサッカー選手ダニー・ウィリアムス、妹の女子サッカー選手キム・ハンターのストーリーが用意されていて、前作よりもボリュームアップした。それぞれにチームでの役割や目標が設定されていて、ロールプレイ感も増している。3つのストーリーが別々に語られていくが、ときには交差する場面がある。レアル・マドリードでプレイする兄に会いに行ったり、友人とチャンピオンズリーグで対戦するという経験が味わえるのもこのモードの魅力的なところだ。
物語が前作から続いていて、操作キャラクターも増えたことは物語に厚みをもたらした。同じ出来事でもキャラクターが異なれば見え方が異なり、「そういうことだったのか」と気づかされる部分があったりして、物語の深さを楽しむことができるのだ。
3人の選手としての立場や性格などが前作よりも特徴的なので、自分が今アレックスだったり、ダニーだったりとその役割を演じている感覚がある。前作まではアレックス・ハンター=プレイヤーに近かったが、本作でアレックスはスターになってしまい遠い存在になってしまった。しかし、スターサッカー選手のロールプレイができると考えればとても楽しく、チャリティー活動に参加したり、豪華なプールでプロモーションをしたりとスター選手ならではの生活を味わえて満足だ。レアル・マドリードの選手1人をメンターに指定して師弟関係を結ぶのもおもしろかった。関係が深まると特別な能力を取得できるので、試合を淡々とこなす単調さも前作より軽減している。スター選手からスキルを伝授されているようで気分がよかった。しかし、試合と練習以外でメンターとの接点がないのは少し寂しい。もし、次作で「The Journey」モードが搭載されるならば、実在選手とのイベントを増やすべきだ。もっとチームメイトとの交流が描かれば、自分のチームにさらに愛着が持てるだろう。
チャンピオンズリーグと女子ワールドカップが今回の戦いの舞台となる。サッカー好きの憧れの大会で頂点を目指して戦うキャラクターを見るのは素敵だった。大会終盤は負けたら敗退のトーナメント形式なので、リーグ戦よりも緊張感がある。キャラクターが個人の挫折や葛藤を乗り越えて栄光をつかむ、という王道のストーリーを『FIFA 19』はきちんと描いている。「The Journey」は人生という名の旅でもある。プロテストに挑戦し、海外移籍を経て、ヨーロッパチャンピオンを目指すアレックス・ハンターの人生(といっても彼はまだまだ若い)を味わえたことを私は誇りに思う。「The Journey」3部作で別パッケージ化して発売してほしいぐらいだ。アレックス・ハンターの物語は堂々と完結したので、次の「The Journey」ではまた別の選手のサッカー人生を体験したい。
試合のプレイフィールは大きな変化なし
試合の操作感覚は最新のアップデートを適用した前作『FIFA 18』と大きく変わっていない。変化が少ないというのは、完成度が高いということだ。もちろんこれまでのシリーズで培った経験が最新作『FIFA 19』でも活かされている。たとえば、『FIFA 18』リリース時のように点が入りすぎて現実のサッカーからは考えられないようなスコアになることはない。ドリブルもモーションやトラップなどのモーションが改良され、スピードだけでぶっちぎることが難しくなった。トラップについてもフェイントをかけられるようになったり、プレイヤーが介入できる場面が多くなっている。新要素のタイミングフィニッシュはうまく決めることができれば、ものすごいスピードでボールをゴールネットに突き刺すことができて爽快感抜群だ。不満点を強いてあげるとすれば、ロングパスが通りすぎることぐらいか。ボールを奪ったら一気に相手DFの裏へ放り込むことで決定機を作りやすい。非現実的なほどに繋がってしまうのでアップデートで修正してほしい。プレイフィールに大きな変化がないことは「FIFA」の完成度が高い証拠でもあるので、今後も細かな修正を施してさらにいいものになってほしいところだ。
攻撃時と守備時にフォーメーションを変える「可変フォーメーション」が設定できるようになったり、現実のサッカーのトレンドにも対応。ポーズ画面でメニューを呼び出さずにゲームプランを切り替えられる「ダイナミック戦術」は試合のスピード感を保つのに貢献している。
試合前の演出は本物そのもの
試合前の演出は現実のサッカー中継さながらだ。本作でついにチャンピオンズリーグの公式ライセンスを取得したほか、イングランドのプレミアリーグやスペインのリーガ・エスパニョーラなどヨーロッパのトップリーグを多数収録している。現実のサッカー中継を忠実に再現した試合開始前の画面を眺めながら、チャンピオンズリーグのアンセムが流れてくるのはサッカーファンにとっては感動ものだ。レアル・マドリードなどチームによってはサポーターのチャントも収録されていて試合を盛り上げてくれる。
日本語の実況と解説はやや単調に感じる部分があるのが少し残念だ。BGMには著名なアーティストが楽曲を提供している。多数の曲が収録されていて、レパートリーに富み聞いていて飽きがこない。サウンドトラックについてはこちらの記事にて詳しく取り扱っているので読んでみてほしい。
完成度をさらに高めたキャリアモードと新しい試合形式が楽しめるキックオフ
選手を育成しチームを指揮することができる「キャリアモード」は大きな変更はない。完成度が高かった前作にいくつかの改善を施したといった程度だ。新しくライセンスを取得したチャンピオンズリーグなどの演出が強化されたり、選手の固有フェイスが増えたりしている。腕に自信があるプレイヤーにとっては、新しい難易度であるアルティメットが追加されたのも喜ばしいことだろう。リアルを追求する一方で、試合時間の変更ができなくなったことは細かいことながら不満点として挙げておきたい。スタジアムによっては屋根で昼間はピッチが見辛くなってしまうことがある。リアルを突き詰めるのはサッカーファンとして応援したいが、ゲームとしての快適性をないがしろにしないでもらいたいというのもゲーマーとして正直な感想だ。
もっと改善してほしいのがUIだ。初回起動時は間違いなくメニュー画面から戸惑う。四角で区切られたエリアにそれぞれのモードがあり、そのなかでさらに切り替える必要がある場合もあったりする。なおかつ、今自分がどれを選んでいるのか、どこにカーソルを合わせているのかが極めてわかり辛い。
1試合を手軽に楽しめる「キックオフ」モードはリニューアルされている。おもしろいのは特殊ルールを採用できるところだ。点を決めるたびに自チームの選手が減っていく「サバイバル」は流行りのバトルロイヤルモードを思いださせる。最大4人の選手が自チームからいなくなり、点を決められやすくなるのは緊張感を与える。しかし、抜ける選手がわからないのはよくない。ゴールを決めた選手がいなくなる、というルールならば「メッシがいなくなるのは痛いから、ゴールじゃなくアシストに専念しよう」という工夫が生まれるはずだ。ファウルやオフサイドがない「ノールール」も新鮮だ。現実では絶対不可能なこのルールでサッカーゲームが楽しめるのはいい経験だ。どう考えてもオフサイドなのにパスが通ってゴールが認められるのは普通のルールになれたプレイヤーこそ戸惑うが、思わず笑ってしまうおかしさがある。
なお、キックオフモードでは戦績、決めたゴールの種類、パス成功率などプレイデータが記録される。参照することで実力向上の指針となるだろう。
もったいないのは、せっかくの特殊ルールなのに楽しめるモードが少ないことだ。オンラインでのランダムマッチができたり、オフラインでのキャリアモードでも適用できればよかった。
THE VERDICT(判定)
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「The Journey」は王道ストーリーで堂々の完結編
完成度の高い試合のプレイフィール
本物さながらの演出
豪華なサウンドトラック
可変フォーメーションで戦術に深み
わかり辛いUI