『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS : M∀RS』(以下、ANUBIS)との出会いはオリジナルのPS2版。それから時を経ても、PS3への移植版『ZONE OF THE ENDERS HD EDITION』(以下、Z.O.E HD)での技術的な移植秘話に感心させられ、ベースがPS2タイトルとは思えないクオリティとトータルパフォーマンスに再感動したのを今でも覚えている。
そして本作は、そのZ.O.E HDをクオリティのベースにしつつ、4KやVRにも対応させたANUBISにおけるロボット(オービタルフレーム)アクションの最終形態とも言えるバージョンだ。
ゲームを起動して始まるオープニングは、何度見てもハートを震わせてくれる出来だ。本編の名シーンが7分50秒という時間に凝縮されている。筆者は懐かしさで何度もリピートしてしまったが、本編中の名シーンが登場することを考えれば、初プレイの場合は起動直後のオープニングはスキップしてそれらをあとの楽しみにするのも十分ありだ。
やはりZ.O.E HDのリメイクもほしい
本作は、膨大な数の敵を一気にロックオンし、美しい曲線美のホーミングレーザーで一気に駆逐するのが心地いい。そして映画を見てプレイするかのような、カットシーンやブレードによるチャンバラ風アクションなど、ひとつひとつがにカッコイイ超ハイスピードアクションだ。
PS3版Z.O.E HDは、1作目(Z.O.E)と2作目(ANUBIS)をセットにしたタイトルだったが(のちに単体版も発売されている)、今回はANUBISのみ再リマスターが行われた。基本的なストーリー構成はそれぞれで完結しているため、ANUBISからプレイを始めても問題はない。
物語は木星の衛星で砕氷作業に勤しむ主人公ディンゴが、捨てられた最強のオービダルフレーム「ジェフティ」を発見したところから始まる、ロボットものではよく見かける開幕だ。
思いがけない再会や、前作から続く戦闘支援AIエイダの人に近づくかのような成長、熱い対峙など、息の尽かせない展開が多い。その物語を最大限味わい尽くすためにも、やはり前作で何が起きたか知っておいた方がいいため、ストーリーの再確認にもZ.O.E HDが欲しくなる。
幸いPS3版は単体版が1028円(税込)と安くDL販売されているため、それを購入するのも手だ(これこそ、PlayStation Nowに対応してもらいたいところだが……)。
しかしZ.O.Eは、ちょっと冗長気味でテンポの悪いストーリーや、ステージ構成がかなり異なるものになっている。基本的にはどちらも同じ超ハイスピードロボットアクションを体験できるのだが、Z.O.EとANUBISは若干別物のような側面もあるので、簡単に頭に入れておくといいだろう。
一方のANUBISは、ストーリーがハイテンポで無駄は少ない。目まぐるしく地形の変化するステージ、巨大戦艦とのバトルなど、ステージごとの変化に富んだ非常に濃密なゲーム体験が過ごせる。だが一部、かなり制限された行動や戦い方を求められるステージが、周回プレイを躊躇させるレベルで鎮座している。そのためすべてを手放しで褒め称えるのは少し難しい。
独特の展開に慣れるまで、十数回のトライアンドエラーを強いられるステージも多く、的確な行動を見つけ出す必要がある。そういった意味で難易度は高めとも言えるのだが、パターンを見つければすぐに難易度を引き上げても余裕が生まれるバランスになっている。
今でも通じるように、より美しくパワーアップしたグラフィック
本作はテクスチャレベルで4Kに対応することでより高精細になった。この対応により、かつてない大画面環境下でも滑らかで美しい「ジェフティ」や「アヌビス」を愛でることができるのはとても喜ばしいことだ。加えて現代技術のポストエフェクトを取り入れることで、映像がより鮮やかに生まれ変わったと言ってもいいだろう。
現代技術のポストエフェクトを取り入れることで、映像がより鮮やかに生まれ変わった
ただ、こちらについては評価の分かれるシーンも見て取れる。映像はよりハイコントラストになり、ポストエフェクト処理の導入などでビジュアルはよりリッチになった。ただあまりにも映像がスッキリしたことで、PS2時代の低ポリゴンがより目立つようになってしまった。
重要なのは全体のバランスである。夕日のシーンなど、鮮やかになったことでかなり栄えるシーンは多くなった。
しかし、エフェクトの少ないシンプルなシーンでは、シャープになりすぎて細部が目立ち、ローポリゴンの限界による映像の物足りなさも感じてしまう。PS3版Z.O.E HDでは、コントラストはオリジナル同様抑え気味だったため全体的にマイルドだったことで、細部の輪郭も曖昧になり情報不足を補ったバランスだった。
旧世代からのリマスターは少なからず古くささを感じるものだが、ANUBISにはほとんどない
また、たいていどのようなタイトルでも、PS2やPS3など旧世代からのリマスターは少なからず古くささを感じるものだが、ANUBISにはほとんどない。これは驚異的なことで、これはゲームシステム全般にも言えることだ。もちろん第一線のAAA級タイトルとの比較こそできないが、いまだに色あせない全体のセンスとクオリティは素晴らしい。
それは、新川洋司を中心としたデザイナー(こちらでオリジナル版当時の貴重なインタビューや秘蔵資料が閲覧できる)による、低~中ポリゴンを感じさせない、PS2時代でも栄える、巧みなメカニックデザインによる恩恵が非常に大きいだろう。
UIはカスタマイズされたが使い勝手はもう一歩
プレイ中にミニマップを表示できるようになり、新たな操作タイプに「Pro」がオプションとして加わった。これらにより遊びやすくなり、特に「ミニマップは便利!」だろうと思ったのだが、いざ使ってみると表示範囲が狭すぎて、結局はメニュー画面のマップを開くことが多かった。
一方の「Pro」の操作モードについてもその感触は少し微妙だ。基本操作はそのままなので違和感なく使えるが、敵の拘束や極太レーザーなど、ゲームの進展によって増えるサブウェポンの切り替えが中途半端。最大4種類を一瞬で切り替えられるのはいいのだが、各ボタンに割り当て可能なサブウェポンが固定されているため、完全に好きな組み合わせで使えないのは痛い。
しかしいい面もあり(なくては困るが)、サブウェポンのボタンがアナログ入力ができるR2ボタンに独立して登録された(通常は○ボタンに掴みとサブウェポンが登録)。それによりPS2時代と同じボタンの強弱でサブウェポン制御が可能になり、使い勝手もかなりよくなった。
ただ個人的に、「ダッシュ/バースト」の同じボタンへの割り当ては独立させてほしかった。バーストを使いたくても、ほんの少しでも左スティックを倒していると「ダッシュ」が発動してしまうため、「ダッシュ」と「バースト」の使い分けが小難しい。
またリマスターの性質上致し方ないのだが、自動ロックオンの煩わしさもそのままだ。戦闘のテンポがかなり早いゲームなので難しいところだが、大量の敵と戦う際には、うまく敵を捉えられなくなり戦闘が困難になることが多々ある。ゲーム性が大きく変わってしまう可能性はあるが、ロックオンシステムに根本的なテコ入れも欲しい。
酔いを感じる暇もないほど目まぐるしいVRモードと、さらに充実のオマケモード
パフォーマンスに十分な余力を残している状態を活かして対応したのが、PlayStation VRを用いたVRモード。VRでロボットゲームを遊ぶというのは夢の展開のひとつだが、本作についてはまったく噛み合っていない。
VR酔いすら感じる暇もなく目まぐるしく映像が変化
加えて近距離攻撃の場合、特にブレードでの攻防時に激しく機体が動くため、VR酔いすら感じる暇もないくらいに目まぐるしく映像が変化する。それによって何が起きているのか理解不能になってしまう。それが一時的なものならまだしも、ゲームの主軸で発生しているのは流石に問題で、何かしらチューニングが必要だと思う。
ただ、対策をやり過ぎると迫力のロボットアクションではなくなるため、どうするかは難しいところだ。考えられる方法とすれば、コックピットに搭乗した一人称視点から、通常のゲームモードと同様三人称視点に変更し、VR専用の視点移動を作り上げるぐらいだろうか。
その代わりではないが、新たに追加された多くのボーナスコンテンツでVRに完全対応した。ジェフティなどオービタルフレームを自由に鑑賞できる「MODEL VIEWER」や「HANGAR」モードに、イベントシーンを任意に再生できる「CINEMATIC THEATER」がVRでも堪能できる。
また、そのほかのオマケ要素も充実している。元々収録しているものだが、ストーリーが短い面を補うエクストラミッションや、コナミの『グラディス』を模して3Dタイプに変化させた『ZORADIUS』などををクリア後に遊ぶことができる。
残念ながら『ZORADIUS』をVR視点で遊べないが(シアター視点で遊ぶことは可能)、「CINEMATIC THEATER」では一部のイベントシーンの世界にVRで入り込み、迫力のイベントシーンを体験できるなど、ゲーム本編より格段にVRの相性がいい。
最後にHDリマスターやリメイクについて
HDリマスタータイトルやリメイク作品では、オリジナル版の内容を尊重するのは非常に大切だ。だが、明らかに足を引っ張っているような内容まで尊重する必要はないと思う。極端な話、そこをカットしてしまってもいいぐらいだ。
超ハイスピードアクションが売りのANUBISにおいて、指示に従いゆっくり移動するだけのステージは「もう二度と遊びたくない! 」と叫びたくなる。さすがに本当にカットする判断は難しいところかもしれないが、その部分はストーリー的にも大きく重要ではないため、オプションでショートカットをつけるなど素早く突破できるルートを導入してもよかっただろう。
そのような手入れのバランスの見極めや、開発コストの問題で難しい面も多々あるのは理解するが、よりよい移植というものを多くのタイトルで見てみたいものである。
そういった意味で、本作では思いっ切り空回りをしている印象を受けたものの、プレイアビリティ面での改善や、オマケモードにささやかな新要素力を入れていたこと自体は、とても大きく評価をしたいと思う。
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現行技術と4Kで対応で、美しく生まれ変わったビジュアル
古さを感じさせないメカニカルデザインやゲームデザイン
より充実したボーナスコンテンツとVR
新要素のミニマップや操作モードが空回りしている
相変わらず厳しい一部のシーンでの自動ロックオン
VR酔いすらすっ飛ばす本編VRでの激しすぎるカメラ移動
ごく一部分の制限のあるステージ