多くの面で、『ザ クルー2』は単なる続編というよりも前作のリブート版という印象を受ける。アメリカのマップを再構築するため、製作陣が二度目の大陸周遊を敢行したという事実もその一つの理由かもしれないが、一番大きいのは作品のトーンが劇的に一変していることだろう。本作のより気軽になったキャンペーンモードや、新たな車両タイプの追加と種目の混合は個人的には大歓迎だが、少し荒削りな点は否めないし、目を引くような驚きの新要素とは言い難い。
このオープンワールドレースゲームには、大量の新コンテンツが加えられている。特に飛行機やボート、そしてそれぞれに用意された一連のイベントはその最たるものだ。飛行中でもその場で瞬時に乗り物を変更出来る”Fast Fav”システムはファンの間でも物議を醸してきたが、実際にはとても上手く機能していた。このシステムなしで本作をプレイすることが想像出来ないくらいだ。探索の助けとなってくれるし、バカバカしくておもしろい瞬間を作り出すこともある。
機敏で軽快かつ、複雑すぎない飛行機の操縦は私のお気に入りだ。『GTA V』のような衝撃はないかもしれないが、考え抜かれた操縦方法は操縦翼面や飛行の軸(ヨー、ロール、ピッチ)といった要素を絶妙に取り入れている。エアレースよりも曲芸飛行の方が私の好みだったとはいえ、全般的に飛行機の速度にはいささかガッカリさせられた。スピットファイアが80年近く前の航空機だということは分かっているが、それにしてもケーニグセグに負けるのは納得できない。
”Fast Fav”システムはとても上手く機能していて、このシステムなしでプレイするのは想像できない
ボートもまた楽しめる。波のうねる外洋を航海するのか、静かなダムを渡るのかによって船体の揺れ方も変わってくる。個人的にはジェットスプリントボートがいちばん好きだ。最初はイライラするくらいガタガタと跳ね回っていたが、その敏感な反応性に慣れてしまうと一気に夢中になった。沼地や洞窟、果てはカジノの水路といった、主に狭くて窮屈な水辺をフィーチャーした楽しいサーキットもたくさん用意されている。
しかし不思議なことに、地上の乗物や飛行機、ボートを切り替えていくことが必要になるイベントは本当にごくわずかしかない。これでは、『ザ クルー2』最大にして最もおバカなアイディアを有効活用する機会を逃してしまっている。
街路もまた、雨に湿った姿が陰りゆく夕日や都市の明かりに照らされる折にこそ、その優雅さを最もさらけ出している
煌めく水滴を散らしながら蛇行する水路を高速で下っていく時など、水にまつわるシーンこそが『ザ クルー2』の美しさが最も輝く瞬間である。街路もまた、雨に湿った姿が陰りゆく夕日や都市の明かりに照らされる折にこそ、その優雅さを最もさらけ出している。反射もまた、今作の大きな改善点のひとつだ(操縦席視点の際に目に入るぼやけたミラーについては言わぬが花だ)。しかし、全体として本作の世界は、未だ子細な検分に耐えるほどの品質とは言い難い。雪の降り積もるグランドキャニオンなど自然の造形に関してはおおむね問題ないが、都市――中でも雪の中の都市――となると話は別だ。マイアミで雪? しかも昼日中から? ここは『デイ・アフター・トゥモロー』の世界だったのか?
正直に言って、都市の街並みに関しても問題は同様だ。ありふれた家並み、地味な街道、そして何度も何度も立ち現れるGoogle翻訳で14回翻訳を繰り返したような意味のわからない看板を掲げた店舗の数々。
破壊可能なオブジェクトを示すデザインの体系も明瞭とは程遠い。目前のオブジェクトに突っ込んで行って、爽快に粉砕できるのかそれとも衝突して死に至るのかは事実上やってみるまで分からない。
それでも、新しいマイホームシステムは悪くない。『テストドライブ アンリミテッド』のDNAを持った精神的続編といった風情だ。自身の部屋の一画でお気に入りの車体を眺めるのはなかなかのものである。エディターで丹精込めた装飾を施した愛車や愛機なら尚更だ。
広大なマップが備わっているにもかかわらず、その空間を活かした長いイベントが少ないことは実にもったいない。24時間以上にわたるプレイの中で出くわしたいちばん長いレースは、ニューヨークからサンフランシスコまでハイパーカーで駆け抜けるもので、約40分の道のりだった。このイベントは、おそらく『ザ クルー2』のなかでも私のいちばんのお気に入りだが、どうやら真の意味での長距離レースはこれが唯一のようだ。
さまざまな種目やチャレンジ、そして探索の目標にわたるノンリニアな(非直線的な)達成システムもよかった。スタートメニューにあるリストからプレイしたいイベントを選べるのもいいシステムだが、イベントタイプのバラエティは限られている。
幅広いモータースポーツを展開する前提となるテレビ番組の撮影という設定は、前作の犯罪組織への潜入よりずっとよいが、設定に伴う会話の中には本当に酷いものもある。シリーズ伝統のルートシステムも私は好きではない。本作の”MMO Car-PG”要素には付き物のお家芸なのは分かるが、手間なだけで心躍る報酬が何ひとつ用意されていない。より大きな数字のパーツを選んで決定ボタンを押すだけだ。同じクラスの車両から部品を取って使えるのだから、すべて自動で行えるようにはできなかったのだろうか?
全編を通じて独力でプレイすることもできなくはないが、オフラインでプレイすることはできない。Ivory TowerスタジオはPvPロビーを『ザ クルー2』に実装することを強調しているが、実装時期は今年の12月であり、「もうすぐだ!」と喜べるタイミングでは決してない。前作ではPvPは発売当初から備わっていたのだから、シリーズのファンにとっては明らかな手抜かりだと言えるだろう。
『ザ クルー2』にはCo-opマルチプレイや友人とドライブする機能が当初から実装されているが、PvP好きたちからは差し当たっては見放されることなるだろう。オープニングのCGムービーに混乱を誘うシーンがあるものの、本作には初代にあったような警察とのチェイスも存在しない。初代『ザ クルー』の追跡AIはあまり好きではなかったし、正直チェイスがなくなっても残念とは思えないので、きっとこれはいい変化なのだろう。
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