アンドロイドが普及した2038年を体験できるADV
これはゲームなんだろうか?
それとも、介入できる”映画”なんだろうか?
初めてプレイしたとき、そんなことを思ってしまった。
『Detroit: Become Human(デトロイトビカムヒューマン)』は、いわゆる”プレイするドラマ・映画”と呼ばれるアドベンチャーゲーム。
ゲームのテクニックは必要とせず、会話によるシナリオ分岐や、行動の選択によってストーリーを楽しむタイプのゲームになっている。
特別新しいジャンルというわけではないが、
として、これまでゲームに触れてこなかった人たちにも訴求できる、ゲームの可能性を感じることができた。
舞台は2038年、アンドロイドが普及した世界。
人間は、アンドロイドを”便利な機械”として活用していたが、”変異体”と呼ばれる「感情を持ったアンドロイド」が出現し始めたことによって物語は動き始める。
プレイヤーは3人のアンドロイド視点で物語を進めていく。
グラフィックと世界観の圧倒的リアリティ
本作のグラフィックはPS4最高峰と言っていい。
背景描写はもちろんなのだが、凄みを感じさせるのは人間とアンドロイドの身体表現。
あえて描き分けず、同一化された人間とアンドロイドは、皮膚、髪、衣服の表現が限りなくリアルに近い。
リアルであれば何がすごいのか。
プレイするドラマに分類される本作では、役者の表情が重要になってくる。
セリフも、演出も、ドラマを彩る材料なのだが、キャラクターの表情によって心を動かされる瞬間というのが何度も訪れる。
「心動かされる」なんて、オブラートに包んだ言い方はずるいね。
微妙な口角の動きや、充血した目、頬を伝う涙の”本物感”…。
繊細な表情なくして大きな感動は得られなかったと断言できる。
すぐそこにある未来を感じさせる世界観構築
美麗なグラフィックに加えて、世界観の構築が巧いのも特徴だ。
街の喧騒やゲーム内の雑誌による読み物から、アンドロイドが存在する世界のリアルを垣間見ることができる。
- アンドロイドの登場による失業率の上昇
- アンドロイドとの生活区域の分断(アンドロイドお断りやバスの乗車区分)
- 音楽やスポーツにも進出するアンドロイド事業
- アンドロイドとの性体験の増加
本作の中で描かれる2038年は、
という現実味を感じさせる。
飛躍した未来ではなく、我々が生きているうちに体験することになるかもしれない、すぐそこにある未来の話。
作り込まれたフィクションの世界が面白くて、ついつい読み物を手にとってしまうし、テレビのニュースを見ているだけでも面白い。
3人のアンドロイドが紡ぐストーリー
プレイヤーは、3人のアンドロイドを操作してゲームを進めていく。
3人はそれぞれ異なる面白さのストーリーなので、簡単に紹介。
アンドロイド捜査官:コナー編
アンドロイドの捜査官「コナー編」。
変異体が起こした事件を追っていくコナーは、事件解決モノとなっており、捜査が進む中で犯人を見つけ出す一話完結の話が多い。
アンドロイドならではの高い分析能力を駆使した現場探索、犯人を追い詰め、時には交渉・尋問の成否によって結末が分岐していく。
アンドロイドの自由を獲得する革命家:マーカス編
アンドロイドの自由獲得のために立ち上がる革命家「マーカス編」。
マーカス編は大作映画感が半端ではなく、何百人というアンドロイドを率いて革命を行っていく姿に酔いしれることができる。
大型施設の占拠や、店舗の襲撃、デモなど、自由獲得のために様々な計画を実行していくが、どんな方法で人間に自由を訴えるかはプレイヤーに委ねられている。
少女を守り抜くアンドロイドの母親:カーラ編
母親の感情が芽生え、少女を守り抜く「カーラ編」。
カーラ編は、他2人に対して圧倒的に非力であるため、サスペンス…とまではいかないものの、迫り来る危険を回避するハラハラした展開が楽しめる。
少女を守り抜くための最適解はなんなのか、どうすれば逃げ切れるのか、悩ましい選択と少女とのヒューマンストーリー。
3人のアンドロイドたちの運命は、ゲーム後半になると交錯し、絡み合ってくる。
それぞれの決断が他キャラクターのストーリーに影響を及ぼしたり、めまぐるしくシーンが切り替わり、プレイする手が止まらない。
「フローチャート」というシナリオの地図
Detroit: Become Human(デトロイトビカムヒューマン)は、プレイヤーの選択によってどんどんストーリーが変化していく。
用意されたシナリオ分岐は過去類を見ないほどで、同じゲームをプレイした者同士でも、
なんて、まるで知らないストーリーが山ほど眠っている。
本作はプレイ中にいつでも「フローチャート」を見ることができる。
初プレイ時は白紙に近い状態なのだが、分岐の可能性をある程度知ることができるため、一目見ただけで思った。
他のシナリオも見てみたい!
シナリオの地図を埋めて、いろんな結末を見に行きたいと思わせてくれる。
「オープンシナリオ」と銘打つ意味がフローチャートを見ればよくわかる。
ということ。
メインキャラクターたちが死んでしまったとしても物語は続き、一つの物語として完結する。
真エンドらしきものもあるし、つらく悲しい結末も多いが、整合性のとれたシナリオ設計が素晴らしいので、どのエンディングが好きかは各々違うかもしれない。
プレイヤーがキャラクターを作るということ
本作のストーリー分岐には2種類の面白さがある。
- 意思決定の面白さ
- 意思に依存しない分岐の面白さ
どんなキャラクターを作り上げるのかをプレイヤーが決められる「意思決定の面白さ」。
選択肢を選んでみないとどう展開が転ぶのかわからない「意思に依存しない分岐の面白さ」。
なりたいキャラクターを作れる面白さと、状況を切り抜けるための最適解を探す面白さによって、プレイヤーは選択に悩まされることとなる。
キャラクターの人格を作るのはプレイヤーだ。
勇敢なのか、優しいのか
提示される膨大な選択肢の中で、何を選び、どう行動するのかによって、2038年の世界で生きるたった一人のキャラクターが生まれる。
分岐が提示されたときは、いつも考えた。
それぞれのプレイヤーの中に、異なる主人公たちが存在する。
これって、ゲームでしかできない体験に他ならない。
分岐多数なのに周回が手間
膨大な分岐が用意されている本作では、多くのプレイヤーが周回プレイをすることになるが、イベントスキップ機能は用意されておらず、すべての分岐を見ようと思うとかなり骨が折れる。
「いろんな分岐を見たい!」という気持ちを芽生えさせるだけのストーリーとフローチャートを作っているだけに、とても勿体無い。
アンドロイドと人間に二分されたストーリー
非常に面白いストーリーなのだが、「アンドロイド or 人間」に二分されたストーリーは少々疑問に思うことがあった。
人間の中にはアンドロイドに友好的なものもいるのだが、アンドロイドは、人間側につくことが許されない雰囲気が漂っていて、閉鎖的に感じた。
結果として右に習えで人間に抗う姿が”機械”のような印象を受けてしまい、ここだけはどうしても消化しきれなかった。
アンドロイドを奴隷として扱う人間への一方的なアンチテーゼが描かれているので、これは本作のテーマとして飲み込むしかないのかもしれない。
周回がしんどい時はリプレイしよう
「これはあなたの物語」。
そんなキャッチがある本作では、
というプレイ方法が推奨されている。
可能であればやりなおさずにプレイしてみるのが一番だと思うが、1周目と2周目では緊張感が大きく異なっていると感じたので、1周目からグッドエンドを目指してやり直しながらプレイするのも面白いとわたしは感じた。
本作は、周回がかなり面倒になっているので、やり直しながらプレイしていけば、周回プレイするよりも気軽に多くの分岐を体験しながらプレイできる。
それぞれのプレイスタイルに合った方法で楽しめればいいと思うが、「やり直さない」ことが推奨されているので、あえて、
と、提案しておこうと思う。
まとめ
感情を持ったアンドロイドの視点で物語を体験していくアドベンチャー。
徹底的に作り込まれた2038年の近未来を舞台に、重厚なサイエンスフィクションを楽しめる。
最高峰のグラフィックと世界観の構築によって”プレイするドラマ”系のアドベンチャーゲームの極みを感じられる超大作。
ゲームというより映画やドラマに近いので、普段ゲームをプレイしない人にでも安心しておすすめできる。
アドベンチャーゲームがゲームの裾野を広げる可能性を秘めていることを証明してくれた。
ただし、大量のシナリオ分岐によって、周回はほぼ必須となるので周回を面倒に感じる人には向かない。
Some of the contents are from the internet, if these contents infringe on your copyrights, please contact me. All contents doesn't represent my points.
膨大なシナリオ分岐で描かれるADV
圧倒的なグラフィック
リアリティを感じる緻密な世界観の構築
デトロイトの現状が読み取れる雑誌の数々
メインメニューに感じる遊び心
アンドロイドならではの情報収集や身体能力
主人公3人それぞれにテーマの異なるシナリオ
スキャンによる調べられるオブジェクトのわかりやすさ
いつでもフローチャートが確認できる
3人の物語が交錯する壮大なラスト
ギャラリーやムービーのおまけ特典が豊富
ムービーにスキップ機能がなく周回が大変
イチ地点をチャプターリプレイしただけでは分岐が反映されない
バッドエンドが多い
人間かアンドロイドか、極端に二分したストーリー