コンパイルハートがおくるガラパゴスRPG 第4弾「Death end re;Quest(デスエンドリクエスト)」のレビュー記事です。
バグをコンセプトに、VRMMOからの脱出を目指す本作。ゲームと現実世界を行き来しながら謎を解き明かすストーリーや、「99%の絶望」と謳う多彩なバッドエンドが目を引きます。フィールドのバグを取り除くことによって、チートで改変できるバトルシステムも斬新です。
中盤までは目新しさもあって高い評価だったのですが、黒背景を多用した演出面の物足りなさや、後半になるほど説明・伏線不足の粗が目立ち、評価は右肩下がりでした。手抜きとまではいわないものの、最後まで詰め切れなかった印象で、とても惜しいと感じる作品です。
バグったVRMMOからの脱出を目指すストーリー
開発中止となったVRMMOの中で、失踪していたヒロインが目覚めるところから始まるストーリーは、バグだらけの奇抜な展開ばかりです。登場するキャラクターたちも、バグ=蟲のイメージで、かわいらしいけど魅惑的な見た目が特徴になっています。
容赦のない悲痛なシーンが多く、鬼気迫るようなボイスも付いていることから、暴力・恐怖表現に耐性のない人には、つらいかもしれません。逆に、残酷な展開や女の子の悲鳴、グロテスクな表現を楽しめる人には、強くおすすめです。
アドベンチャー形式で進行する現実編
ヒロインの脱出劇は、現実世界の主人公と協力しながら進めていくことになります。特定のシーンを除いて、ゲームと現実世界は自由に切替えが可能です。ゲーム内の行き詰まりを、現実で調査して解決に導くなど、2つの世界を行き来しながら、様々な謎を解き明かしていきます。
RPG形式のゲーム内に対して、現実編はアドベンチャー形式です。選択肢も豊富に用意されており、選択によってはバッドエンドに行き着きます。オカルトネタを中心にしたホラーサスペンスのストーリーで、グロテスクだったゲーム内とは異なる恐怖が用意されていました。
悪趣味な装備品も手に入る99%のバッドエンド
「99%の絶望」と謳われているとおり、本作には数十種類のバッドエンドが存在します。現実編の選択肢だけでなく、ゲーム内でも特定の行動を取ると行き着くため、油断はできません。ゲームオーバー後の再開はセーブデータからになるので、慎重なセーブが必須です。
バッドエンド専用のイベントCGも豊富でした。関連した装備品が入手できる悪趣味な要素が用意されており、攻略のためにも積極的に収集することになります。未解放イベントを確認できるイベントチャートもあって、バッドエンドの取りこぼしを防げる親切な作りでした。
黒背景を多用したテキストだけの投げやり演出
特徴的なテキストと迫真のボイスが印象に残った反面、黒背景にテキストだけの投げやりな演出も目立ちます。特に、イベントCGが用意されていないバッドエンドは、唐突に数行のテキストで締める強引な幕引きばかりです。バッドエンドは数が多いだけに、とても残念でした。
CGや立ち絵の枚数はそれなりに多いため、手抜きと言い切れないのが難しいところです。どちらかといえば、2つの世界と多種多様な展開に対して、演出の作り込みが追いつかなかった感触でした。プレイヤーの想像に任せるにも限界があるので、もう少し注力してほしかったです。
後半になるほど目立った説明・伏線不足
ネタバレになってしまうため詳細は語れませんが、ストーリー全体を通して説明・伏線不足を感じました。ほとんど説明がないままに驚くような展開が始まったり、唐突なカミングアウトで難問があっさり解決したりと、一歩間違えれば御都合主義に見えるシーンも多いです。
マルチエンディングの構成や分岐条件についても、あっさりしているため拍子抜けでした。もっと凝った仕込みを期待していただけに、落胆を隠せません。無理矢理な展開が続いても、『オカルトだったら仕方がない』と、細かいことは気にしない人の方が楽しめるストーリーです。
バグにチートで対抗する独特のバトルシステム
ターン制コマンドバトルをベースにした戦闘には、奇抜なシステムが数多く実装されています。1度に3個の行動を選択する「トライアクト」、行動の組合せで新しいスキルを閃く「フラッシュイデア」、敵を吹き飛ばして痛快にぶつけ合う「ノックバグ」と、どれも特徴的です。
フィールド上のバグに触れると、キャラクターの汚染度が上昇していき、一定値を超えるとリスク付きの強化を得られる「グリッジスタイル」、フィールドバグを取り除くことによって、主人公が戦闘に介入する「バトルジャック」など、戦闘にもバグ要素をうまく取り込んでいます。
特に、主人公のバトルジャックはチート行為だけに強力です。倒したボス敵を味方として呼び出したり、ゲームのジャンルを大きく改変したりと自由自在。反面、強引にプログラムを操作した影響でフィールド上のバグが増加してしまう仕様も、よくできていると感じました。
機能不足や不具合でストレスの溜まるカメラワーク
「ノックバグ」を活用するために、敵味方の位置や攻撃方向の調整が重要にも関わらず、カメラに全景アングルが用意されていないのは、大きな不満でした。俯瞰視点が存在するものの、最大まで引いてもフィールドの半分も表示されないので、全く役に立ちません。
加えて、オプションに不具合があって、移動中と戦闘中でカメラ操作の[通常・反転]が上下左右逆転します。[上下:反転][左右:通常]に設定すると、戦闘中は[上下:通常][左右:反転]です。両方を同じ設定にすれば回避できるとはいえ、決まったカメラ操作に慣れている人にとっては致命的な不具合です。
どちらも今後パッチによって改善されそうな項目ですが、このレビューを書いている時点では、ストレス要因として注意が必要です。
予約特典の「END QUEST」は本編の前日譚
RPGツクール制作による予約特典「END QUEST」は、パソコンで遊べる本編の前日譚です。3時間程度のボリュームで、本編ではテキストでしか語られない過去の出来事を、実際に体験することができます。想像で補完する部分を、別ゲームで遊べる形式です。
あくまで予約特典なので、プレイ必須という内容ではありません。実際、私は本編を先にプレイしましたが、特に問題なく最後まで楽しめました。
さいごに
良いと感じる要素が多くあっただけに、しっかりと作り込まれていない部分が目立ったのが残念な作品でした。他ゲームとのコラボや、予約特典として別ゲームを制作する余裕があるのなら、ゲーム本編のクオリティをもっと充実させてほしかったです。
体験版はありませんが、5時間を超える実況プレイ動画が公開されており、作品の雰囲気を確認することが可能です。ネタバレをスキップしながら中盤まで進むので、意外と参考になりました。購入を考えている方は、動画もチェックすることをおすすめします。
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種類豊富なバッドエンド
恐怖を感じるテキストとボイス
独特のシステムを備えた戦闘
黒背景多用の投げやりな演出
御都合主義ギリギリの説明・伏線不足
大ざっぱなゲームバランス
遊びにくいカメラワーク