VRヘッドセットが実用化されてからというもの、ずっとバーチャルな「Skyrim」を体験してみたいと思っていた。PlayStation VRに対応する「The Elder Scrolls V: Skyrim VR」はまさにその希望を叶えてくれた。しかし、本作が魅力的な魔法とドラゴンの世界への素晴らしいバーチャル旅行である一方、VRでのゲームプレイはよく知られた「Skyrim」の不器用な戦闘を改善するものにはなっていない。
VRで「Skyrim」の世界を見ることができるのは、過去にここを訪れた者にとっては大きな喜びだ。間近でドラゴンを目にしたり、「世界のノド」に立ったりしたときに初めて、本当の意味で「Skyrim」の壮大なスケールを理解できるのだ。
残念なテクスチャで出来ているキャラクターが目の前に立っていると、気が散ってしまうのも無理がない。
だが、PS4で「Skyrim」を90fpsでスムーズに動作させることは、大きな代償を伴っている。本作の見栄えは、明らかにシリーズ史上最悪だ。照明と影の効果は最低限に絞られ、環境要素は見渡す限りのローポリモデルとぼやけたテクスチャで出来ている。幸運ながら(?)、描画距離が短いので、さほど遠くまでは見渡せないが。
そもそもキャラクターモデルとアニメーションは「Skyrim」の強みではなかったが、残念なテクスチャで出来ているキャラクターが目の前に立っていると、当然ながらより一層惨く見える。プレイ中に気が散ってしまうのも無理がない。
それでも、VRでの「Skyrim」は抽象的な意味で雄大である。「Superhot VR」のようなゲームに比べて正確性が遥かに劣るが、Moveモーションコントローラーを使って環境に対して直接アクションを起こせるのは素晴らしいし――必ずではないものの――通常は問題なく動作する。
テレポートで移動すると、VRの存在意義とも言える没入感が薄れてしまう。
死体を移動させることができない点について、ダークなユーモアという楽しみが欠落しているのは惜しい。また、おかしなことに、モーションコントロールに対応するNintendo SwitchのJoy-Conではできるのに、PlayStationのMoveモーションコントローラーを使ってロックピッキングをすることがなぜかできない。
移動では、デフォルトのテレポートあるいはフリー移動のどちらかを選択できるが、後者をおすすめしたい。なぜなら、「Skyrim」内をテレポートで移動すると、VRの存在意義とも言える没入感が薄れてしまうからだ。面倒くささを我慢できるのであれば、確実にフリー移動の方が良い。
魔法は最も有効な戦い方であり、魔法を使えば一度に2つの標的を攻撃することもできる。
しかし、どんなコントロール設定にしても、戦闘はめちゃくちゃだ。どんなバージョンであれ、元々「Skyrim」のシンプルな近接戦闘の評判が芳しくないのに、VR版では操作性がさらに悪くなっている。通常、近接戦闘は素早い攻撃と回避、後退が肝だが、そのような機敏なアクションをMoveモーションコントローラーで操作することが非常に難しいのだ。
弓を引く動きは想像通りだが、PS VRの低解像度のせいで、遠くの敵に狙いを定めるのは至難の業だ。この世界で敵と戦う方法として、魔法を当てることが最も有効であり、魔法を使えば一度に2つの標的を攻撃することもできる。ただし、移動しながら撃つことは難しい。
総合的に言えば、「Skyrim VR」は「Skyrim」をプレイする良い方法ではない。しかし、デフォルトの難易度(つまり最も低い難易度)に設定すれば、手首を軽く動かすだけであらゆる者をなぎ倒せる神のような存在として「Skyrim」の世界を歩き回るのは楽しい。この意味においては、本作はベセスダ・ソフトワークスの名作RPGを全く新しい視点で体験できる素晴らしい作品と言える。