まる書いて、おまめがふたつ、おむすびひとつ、あっというまに「星のカービィ」。なんて絵描き歌があるほど親しみやすいカービィも2017年で25歳、つまるところ25周年を迎える。もう立派な大人と言えるのかもしれない(あんなにピンクでぽよぽよでかわいいが)。

そんな「星のカービィ」25周年の節目において、ニンテンドー3DSで「カービィ バトルデラックス!」というタイトルが発売された。ハル研究所が開発した本作は、カービィたちがバトルを繰り広げる対戦アクションゲームだ。もっとも、かなりパーティー寄りであることは留意しておくべきだが。

10種類のルールと15種類のコピー能力によるバトル

カービィ バトルデラックス! レビュー

本作には10種類のバトルが用意されており、オンラインもしくはローカルプレイでそれらを楽しむことができる。しかし「なぜカービィがやたらとたくさん増えて、しかも戦っているのか?」という疑問に答えるために、まずはストーリーモードについてから説明せねばならないだろう。

とある日、昼寝をしていたカービィのもとに1通の手紙が届く。そこには「デデデグランプリ」なる大会が開かれ、優勝すると商品として“デラックス山もりケーキ“がもらえると書いてあったのだ。食いしん坊なカービィはもちろんこれに飛びつき、友人のバンダナワドルディと共に優勝を目指すことになる。

カービィ バトルデラックス! レビュー

しかし、会場に着くとカービィにそっくりな存在がたくさんいることに気づく。実はデデデ大王は「カービィプリンター」なるカービィの偽物を作成する機械を作り出しており、それによってカービィをコテンパンにしようと考えていたのだ。それにしてもこんなに簡単にクローンのようなものを作り出してしまうだなんて、プププランドには倫理観というものはないのだろうか。

運が絡むものから真剣に腕を競うものまでさまざま

ともあれ、カービィはバンダナワドルディと協力しつつさまざまなルールの競技をこなすことになる。相手とガチで戦う「バトルロイヤル」、リンゴを集めてポイントを稼ぐ「あつめて!リンゴマッチ」、コインを拾う鬼ごっこ「トレジャーハンティング」、ロケットにエネルギーを集めて飛距離を競う「とばせ!ロケットレース」など、運が絡むものから真剣に腕を競うものまでさまざまだ。

カービィ バトルデラックス! レビュー
お題に従って短いバトルを繰り広げる「こたえて!アクションシアター」

なお、戦う際にカービィは多種多様なコピー能力を使い分けることになる。リンクのように剣を振り回す「ソード」、カブトムシのツノで突進する「ビートル」、トリッキーな忍術を使いこなす「ニンジャ」など全13種類。さらに今後のアップデートで2種類が追加予定となっている。

ストーリーはあくまでチュートリアルに近く、それぞれのルールを覚えていくことが重要になるだろう。そのうち特殊条件下で戦うバトルも発生することになるが、結局のところ敵はカービィの偽物に過ぎないし、諸悪の根源は例のようにデデデ大王である。コピー能力も使いやすいものから徐々に解放されていくので、肩慣らしのつもりでヤツからデラックス山もりケーキを奪い取ってしまおう。

ランクマッチややり込み要素はあるが、やはり基礎は“パーティーゲーム”

カービィ バトルデラックス! レビュー
バイクに乗り込み高速アタックで相手を轢き、チップを奪い合う「アタックライダーズ」

さて、長めのチュートリアルを終えたらようやくバトルを存分に楽しめることになる。本作は、ひとりもしくは友人たちと実際に会って遊ぶことになる「大連戦」、もしくはランクマッチが楽しめる「ネット対戦」が用意されている。これまで3DSではカービィの対戦・協力プレイゲームはいくつか出ていたが、それらはすべてローカルプレイのみにしか対応していなかった。その点を考えると、ネット対戦に対応したのは非常に大きなアドバンテージと言える(もっともそれらの作品は安価なDLタイトルで「カービィ バトルデラックス!」はフルプライスタイトルなのだが)。

大連戦では時間や遊びたいルールに応じて設定を行うが、ランクマッチの場合は提示された3つの中から希望のバトルを選び、さらに全メンバーの指定したものからランダムで選択される。バトルで上位を獲得することができればランクポイントなるものがたくさん溜まり、自分がより上手くなっていくことを実感できるだろう。

カービィ バトルデラックス! レビュー

また、コレクション要素も充実している。対戦を遊んだり「勲章」という実績のようなものを解除するとバトルコインを集めることができるのだが、それでカービィのきせかえやサウンドを解放することが可能。過去作をモチーフにしたきせかえはファンならニヤリとできるだろうし、知らなくともカービィに新聞紙でできた剣を持たせて楽しむことができる。もちろん、持っているのが新聞紙であろうと切れ味は抜群だ。

ローカルもしくはネット対戦でバトルを楽しみ、バトルコインを溜めてコレクションを解放してきせかえや勲章の解除なども楽しんでいく……というのが本作のメインディッシュとなるわけだが、ここにひとつ問題がある。というのも、ネット対戦においてランクマッチはあるがプライベートマッチはないのだ。つまり、ネットを介してフレンドと自由に遊ぶということが不可能なのである。

「カービィ バトルデラックス!」は、どちらかといえば真剣に対戦するゲームというよりはパーティー寄りだ。実力差が明確に出るルールもあるが、「うまくてもほかのプレイヤーに狙われすぎた」だとか「たまたま選んだコピー能力がルール向きでなく負けた」なんてことも普通に起こりうる。また、負けてもあまり深刻に捉えるものではない。「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズにある“終点タイマン”のような戦い方もほぼなく、気楽に遊べるタイトルなのだ。

ランダムにマッチングするランクマッチしかなく、プレイヤーマッチが存在しないのは片手落ち

にもかかわらず、ランダムにマッチングするランクマッチしかなく、プレイヤーマッチが存在しないのは片手落ちである。できれば顔を付き合わせてローカルで遊んでほしいのかもしれないが、昨今は小学生であろうともネット対戦くらいは普通にするだろうし、プライベートマッチを用意しなかったのはいまひとつ理解に苦しむ。

本作から野心や革新性は感じられない

カービィ バトルデラックス! レビュー

このほかの問題としては、ルールによってはラグが非常に目立つ(「アタックライダーズ」はラグがあると落とされるときに納得のいかない挙動をしやすい)といった点もあるが、パーティーゲーム寄りなのでそこまで取り沙汰されるものではなかろう。概ね高品質でまとまっている。

多くの人にとってはカービィのちょっとしたスピンオフ作品に過ぎない

過去作のフレーズを用いたカービィらしいBGMも悪くないし、特にメインメニューの曲はスポーツもののような熱さで本作らしさをよく表している。操作体系も問題なく、各種ルールやコピー能力の差別化もきちんとできている。とはいえ、この作品に対して“サブゲームの寄せ集め感”が拭えないのは、革新的と呼べる場所がほとんどないからだろう。

結局のところ「カービィ バトルデラックス!」は、それなりに良くできたパーティーゲームでありそれ以上でもそれ以下でもないのだ。近所の公園に集まりダウンロードプレイで本作を遊ぶ子供たちにとっては良い思い出になるだろうが、多くの人にとってはカービィのちょっとしたスピンオフ作品に過ぎない。