今年は本当に多くのドライビング系のレースゲームをプレイしてきたが、その中でも「WRC 6」はかなり楽しい……というか、「大好物!」といったニュアンスのゲームだった。ほどよい難易度のコースレイアウトに、その難易度にマッチした挙動のハイパワーなWRCカーでかっ飛ばすのは本当に気持ちがいい。プレイアビリティはカジュアル気味だったが、車の反応がいいため「車だけではなく、頭のねじも飛んでいるWRCドライバー気分」で「ちょっと頭のおかしい一部の観衆」の横を突っ切るのはスリル満点だった。
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ローカライズのタイミングの関係で前作の発売が少し遅かったため、わずか9ヶ月で新作の発売となった「WRC 7」では、説明が細かすぎて把握しきれなかったコ・ドライバーのナビや、霧や砂嵐などの災害レベルで発生していた過剰演出がどこまで改善されたかなど、期待に胸を膨らませてプレイすることとなった。
(モーター)スポーツを題材にするゲームの宿命
まず「WRC」というモータースポーツを題材にしている以上、前作からゲーム内容に変化が少ないのは宿命だろう……というか、UIに若干の変化がある程度であとはほとんど同じだ。ソロモードは「クイックレース」や「キャリアモード」。オンラインは、最大8人のプレイヤーがお互いの姿をゴースト表示しながら同時にタイムアタックをする「マルチプレイ」や、特定のシチュエーションで世界のプレイヤーとタイムを競い合う「チャレンジ」など、良くも悪くも代わり映えがない。
今作のキャリアモードもジュニアWRCから始まり、ラリーという特殊なゲームに慣れながら徐々にステップアップしていく。チームと年間単位で契約して、「結果重視」「車をいたわる」など所属するチームの方針に従いながらチーム内の評価を上げつつワールドチャンピオンを目指すわけだが、チーム方針の要素が相変わらず曖昧で、どのチームを選んでも違いが乏しい部分など、悪いところもそのまま前作から引き継がれている。
一応前作と同じく「ライバルに勝て!」「○勝しろ」など次へのステップアップのための目標や、新たにステージ間にメディアやライバルなどからメールが来るようになったが、モチベーションが上がるほどの要素ではない。
キャリアモードはもう少し大胆な変化がほしかった
またセッティングを極めようとすると、相変わらず事前に得られるコースの情報が不足して難しく、キャリアではセッティングを無視してデフォルトの状態でゲームを進めていくことになるのも大体同じ。ゲームの楽しさ自体には変化はないので大きな問題ではないのだが、ストーリーが欲しいとまでは言わないけれど、キャリアモードはもう少し大胆な変化がほしかった。
ちなみにチャレンジのオンラインランキングにおけるトッププレイヤーの変態的なタイムも健在だ。グランツーリスモなどロードレースの場合、トッププレイヤーから4秒落ちぐらいで走れるのだが、本作では距離の短いコースですら約24秒落ちとなかなかのへっぽこタイムとなっている。ランキング的には269位とそこまで遅いわけではなく、ひとつひとつの少しの遅れが非常に大きく積み重なるジャンルなので、ソロモード用の簡単なタイムですら思い通りに出すのは難しい。
またそれが普通のゲームなので、まずはタイムや順位を気にせずに、自分のペースで走りそのものを楽しむといいだろう。
大きく生まれ変わったコースレイアウト
それでは何が変わったのかというと、コースの基本設計とグラフィックに、車の挙動だ。WRCは世界を転戦していくのだが、各国の雰囲気の再現度はWRCシリーズ屈指の完成度で、見た目はもちろん、道幅やバンプ(凸凹)の激しさなども土地ごとに異なっており、コースレイアウトはこれまで以上に富んでいる……のだが、今作はやりすぎた。
全面リニューアルと言えるほど細部に至るまで作り直されているのは歓迎だけど、とにかくやたらと路面のバンプが多い。1~2秒おきに車が永遠と跳ねるレイアウトも存在するので、変なアングルで車を加速させると一気にコース外に車が吹き飛んでしまう感じで難易度が高い。しかし「WRC 7」をプレイしたあとに「WRC 6」をプレイし直すと、路面がかなり平坦で単調すぎて物足りず、複雑すぎるレイアウトが悪すぎるとも言い切れない。
コースレイアウトを工夫することで「スリルへのチャレンジ」を表現していると言える
ラリーでは車が飛び跳ねて、とんでもない姿勢になったとしても車を力業でねじ伏せて「曲がって!」ではなく「曲がれ!」と命令するかのように操りながら、あらゆるハザード(障害)をとんでもないスピードで乗り越えていくのが醍醐味だ。そこがラリードライバーは「頭のねじが飛んでいる」と言われる由縁でもあるのだが、今作ではそういった一面を強調するためなのか、よりリアルにバンピーなコースレイアウトに仕上げていた。
それ以外にも道の左右が断崖絶壁となっていて、まるで空の上を走っているかのように感じる恐怖のストレートや、その先がどうなっているかわからないデンジャラスな大ジャンプポイントなど、度胸を試されるレイアウトも多く、コースレイアウトを工夫することで「スリルへのチャレンジ」を表現していると言える。
バンプに加えてコース幅が狭くなった場所も多くなったため、難易度はトータルで倍増した感じで上がりすぎており、正直筆者のキャパを少し越えてしまった。それはリアルの追求だったとしても、ゲームとしては少しやり過ぎのように感じる。もちろんこの手のゲームでリアルを追求するのは当然のことで、ラリーファンへのかなりニッチなゲームジャンルではあるものの、ファンのすべてが運転が上手いわけではないだろうし、コース幅の狭いセクションではバンプを抑え気味にするなど、WRCオフィシャルゲームとしてカジュアルに楽しめる側面を残すべきだっただろう。
次のプレイ映像は、2番目に簡単なミディアムに難易度を設定して、WRC最上位カテゴリーの車でのプレイ映像だが、まだまだ攻め切れていないとはいえ結構頑張っても1位タイムを出すのは少し困難だ。そのためタイムや順位は気にせずに、アグレッシブになったコースで走ること自体を楽しむことに終始した。
SDR(スタンダードダイナミックレンジ)でも美しくなったグラフィック
真夏の照りつける太陽の日差しと、そこから生み出される影のコントラストが美しく、野性味あふれる光の表現も得意
コースの難易度にこそ不満があるものの、ビジュアルに関しては見違えるほど美しくなった。コピ-&ペースト感を出さない形で草や木の密度を上げて、特にライティングのクオリティが上がったことで背景全体のクオリティも一気に飛躍した。走行中はじっくり見ている暇が無いというのもあるが、オブジェクトのポップアップも自然で、あらを探せばしょっぱい部分は多数目に付くが、それでも背景だけなら数あるレースゲームの中で間違いなくトップレベルのクオリティに仕上がっている。
特に光と影のコントラストを変に強調させない絶妙なバランスで、人工的に作り出したフォトリアルではなく、肉眼で実際に見ているかのようなナチュラルな映像になっている。それでいて真夏の照りつける太陽の日差しと、そこから生み出される影のコントラストが美しく、野性味あふれる光の表現も得意としている。
コ・ドライバーの嘘を聞きながら行き着く先は
難易度の上がったレイアウトのコースを高速走行する上で、より重要度が増したのが「コ・ドライバー」のナビゲートだ。ナビは急カーブなら1、緩いコーナーなら6(9)といった数値でコーナーの角度を表現し、コーナーの途中で曲がりが強くなるなら「左6タイトゥン3」などと変化を付けて、大自然の多彩なコーナーを的確にドライバーへ伝えてくれる。前作ではその情報が細かく多すぎて、すべてを伝えきれずにナビが遅れてしまい、コーナーでクラッシュするパターンが多々あったのだが、今作はナビの表現を絞ったことで非常にわかりやすくなった。
レイアウトが豊かにそして難しくなっているからこそ、前作の比ではない楽しさが姿を現す
一方で難易度の上昇で走ることに精一杯になり、ナビの指示を聞き取ることは難しくなったものの、それもジックリプレイすれば徐々に理解できるようになっていく。そしてふと気がつくと、ナビを理解しながらある程度走れるようになってくる。そうなってくるとラリーの楽しさが一気に大革命を起こし、レイアウトが豊かにそして難しくなっているからこそ、前作の比ではない楽しさが姿を現す。これまで散々不満を書いてきたが、アクセル全開で飛び跳ねながら、うっかりハザードにつっこみ大破するスリルと戦いながら、美しい景色の流れるコースを限界を超えて疾走する快感は、ラリー系のゲームでしか味わえない。
ちなみに前作でもやらかしていたのだが、ナビがごくまれに指示を間違えてしまううっかりさんだ。マーカーでは「右8」と表示されるのに、音声では「右7」などと指示してくるため、走っていてたまに「あれっ?」といったことがたまにある。前作よりミスは減っており、全体的に1%にも満たないと思うので基本は問題ないが、それでも100%信頼しきれないのでさらなる改善を求めたい。
そしてもうひとつ大きく変わった車の挙動だが、前作の方が車のコントロールをしやすく楽しかった。物理シミュレーションも一新されたようで、ミドルレンジのコーナーでドリフトの維持が極端に難しくなり、車をスライドさせながらコーナーを切り抜けていくというのが厳しくなった印象だ。前作は安定している挙動の中でも、アクセルを踏み込めば車がスライドしてドリフトの状態に変化を加える楽しさがあったのだが、今回はどう頑張ってもヌメッとした姿勢の変化をやりづらく、なかなかなかなか思い通りのアングルへの微調整が難しい。
逆に言うと過度に車のアングルが変化しないため、短い距離の直角コーナーなどは攻略しやすくなり、微調整が難しいパットでの操作や、あまりドリフトを行わずグリップ走行に近い感覚でのプレイする初心者には遊びやすい挙動となっている。
またハンコンはもちろんパットでの操作性も高いため、初心者にもオススメしたいところだが難易度的に粘りのプレイが要求される。MAXスピードでの疾走は一部のプレイヤーしかコントロールしきれないが、トッププレイヤーのリプレイをダウンロードすることで、異次元の速度とコントロールによるWRC特有の走りを見ることができる。これを自分の走りの参考にしながら、神業を堪能するのもオススメだ。
トッププレイヤーは、通常再生のリプレイでも、早送り? と思えるぐらい異様な速度で疾走する。