選んだ選択肢で未来が変わっていくアドベンチャー
本作は、時間を巻き戻せる力を得た高校生の「マックス」となって、小さな町で起こる事件や物語の変化を楽しむアドベンチャーです。
物語はプレイヤーの選択によっていくつもの展開が用意されていますが、バッドエンド「ゲームオーバー」はありません。
決められた大筋の物語を進めながらも、自分が選んだ選択肢によって会話や人々との関係が変化していくという程度なので、
まさに主人公の視点で一緒に悩んで進めていくので、自分がストーリーを作っている感覚と没入感がズバ抜けていますね。
一度選んだ選択肢でも、直後であれば時間を巻き戻して選択しなおすことができるので、展開を見ながら自分の最善だと思う選択ができるのが良いですね。
大事な選択肢は教えてくれる
選択は会話シーンのいたるところで発生しますが、
のちのストーリーに影響しますよ
というときは教えてくれるので、くだらない会話シーンは気軽に、大事な部分ではじっくり思考してと緩急がきいています。
選択肢の分岐がめちゃくちゃ多いので、用意されているシナリオパターンを想像するとすごいですよ、これは。
同じゲームをプレイしていても、プレイヤーごとに異なる体験ができるのはリプレイ性も増しますし、「自分だけの体験」につながるので大好きです。
時間を巻き戻すギミックを使った探索
ゲーム内容は、ただ人の話を聞いて選択肢を選んでいくだけではありません。
訪れる場所にある無数のオブジェクトを調べられるほか、
例えば、施錠されているドアをぶっ壊して中に入り、部屋の中で時間を巻き戻せば、ドアが壊れていない状態で部屋の中に侵入することができるんですね。
主人公に降りかかる危険も、時間を戻して周囲のものを利用して最悪の未来を防ぐ。
エリアの中を探索して組み合わせてギミックを解いていくという意味では「脱出ゲーム」に近いゲーム性を内包しています。
永遠に思える青春とサスペンスが秀逸なシナリオ
「アドベンチャーゲーム」ですから、シナリオの良し悪しがゲームの評価を大きく左右すると思います。
その点で『ライフイズストレンジ』は秀逸ですね。
特殊な力を手にした普通の少女が、久々の再開を果たした幼馴染の不良少女と絆を深めていく物語は、自分自身の青春時代を思い出すものばかりでした。
夜の学校に忍び込んだり、線路を歩いてお互いのことを打ち明けたり、秘密基地でダベったり。
過剰な依存も感じられるキリキリした友情を手放したくないと強く思いました。
宝物のような時間を味わったあとに、すべてがひっくり返るような展開、さらに大きな事件への発展でサスペンスへ変貌していくなど。
アングルや演出にこだわりを感じるプレイするドラマ
「写真」の勉強をしている主人公なので、ゲーム内の演出は光の露出やアングルが芸術的でとても美しかったです。
この美しさが、ストーリーの「永遠にも思える一瞬の青春」を際立たせてくれるんですね。
絆は深まっているはずなのに、いつ壊れても不思議じゃない脆さを感じるのは、演出の才にあると思っています。
ピントの合わせ方や、被写体の捉え方など、私たちが映画やドラマで見るソレと変わりない映像が展開されます。
自分の選択で物語が変化していくゲーム性と、作りこまれた映像による物語への没入感が、
プレイヤーを夢中にさせて放してくれません!
等身大の女性像
さすがは海外産のゲーム、描かれる女性像が等身大でとても好感が持てました。
地味な主人公の「マックス」ですが、控えめな性格だけがフォーカスされることはなく、人並みに汚い言葉も吐くし、スクールカーストの高い人たちとも引け目を感じず堂々と話します。
人格が多面的に描かれていると、プレイヤーが自分を重ねることができる部分が必ず出てくるので、感情移入がしやすいですね。
海外のゲームって、自然な女性描写が上手いので(社会的背景もある)抵抗なく入り込めて好きだなぁ
どう転んでも痛みは残るハッピーエンド好きにはつらいラスト
秀逸なシナリオですが、「選択する」というゲームの性質上、ラストには大きな選択を迫られます。
それはどう転んでも痛みの残るもので、カタルシスを得ることはできますが、ハッピーエンド好きのわたしとしてはつらいものがありました。
秀逸な物語であればあるほど、ハッピーエンドが嘘っぽく映るのも事実なので、余韻が残るこのラストは素晴らしいのだと思います。
だけど、やっぱりわたしはハッピーエンドが大好き
通常の映画やドラマよりも主人公を自分のように感じているので、最後に残る痛みがリアルに感じられて辛いんですよ…。
ややくどい終盤の展開
終始、先が気になる展開に夢中になってプレイしましたが、物語の終盤、時空のはざま?のような場所はややくどく感じました。
時間がループして抜け出せなくなったり、ストーリーの「陰」の部分を延々と見せつけられるのは気持ち良くなく、悪口をずっと聞かされているような気分でしたね。
物語の展開に関係がないただの嫌味な回想は、
リアル調で怖いキャラクターモデリング
しばらくプレイして、物語に夢中になってしまうと気にならなくなりますが、初見ではキャラクターモデリングを怖く感じていました。
クマがあるような顔つきに、ぎょろっとした目つき、パッケージデザインだけだと「ホラーゲーム」だと思われても不思議じゃないですね。
慣れてしまうとむしろかわいく見えてきますし、キャラクターの描き分けもしっかりしていますけどね。
頭を切り替えてプレイする必要があるゲーム性
わたしはこれまでアドベンチャーゲームを遊んでこなかったので、ジャンプもできない主人公や、物語を追うことが主体になっているこのゲーム性に戸惑いました。
序盤は、物語の大筋もわからず、誰にも感情移入もしていないので、ものすごく地味なゲームに感じていたんですね。(キャラクターの顔も怖いと思っていたし)
プレイヤーが操作するのは、時間を巻き戻せるものの普通の女の子で、敵を倒す爽快感もありません。
あくまで、映画やドラマをプレイするような気持ちで向き合わないといけませんね。
まとめ
プレイヤーの選択が物語を紡いでいく、アドベンチャーゲーム。
青春とサスペンスを織り交ぜたシナリオと、取捨選択に悩む選択肢の数々で、物語に夢中になってプレイしてしまうと思います。
「ゲームはアクションや敵がいてこそ!」という人にはおすすめできませんが、連ドラの続きが気になって夜更かししてしまうような方はハマっちゃうかもしれませんよ!
宝物のような時間を切り取ったシナリオに、自分自身の青春時代を重ねて夢中になってプレイしました。なんだろう…。間違いなく「ゲーム」なんだけど、ゲームとして面白かったとかそういうものを飛び越えて、自分の中の「特別な何か」を揺さぶられるゲームでした。
実体験とリンクしていたり、過ぎ去ってもう戻ってこない「あの頃」への郷愁がそうさせるんだと思います。
切なさを残すラストだけはつらかったぁ~。