対戦ゲームはPCゲームの華です。黎明期から、ゲームで他人と戦うことにPCゲーマーは躍起でした。昔のゲームはオンラインだと1vs1しかできませんでしたから、3人以上で遊ぶためにLANパーティなるイベントを生み出してしまいます。自分のパソコンを担いで持ち合ってまでわざわざ対戦するんですから、すさまじい執念です。今日のPCゲーム業界でeスポーツが盛んなのもそうした執念が生きているんでしょうね。
さて、そんなPCゲーム、いやここはもっと大きくゲーム業界ですね。そんな業界なのですから、日夜対戦ゲームが作られているのも当然です。昔から人気のあるジャンルで勝負する作品や、全く新しい勝負を提供する作品まで。今日いろんな対戦ゲームが生み出されています。対戦ゲームが、覇権をかけて争っているわけですよ。これも陰に隠れた熾烈な争いです。
皆さんのまだ知らないであろうPCゲームの世界を紹介する「PCゲーム極☆道(きわめみち)」。今回はそんな熾烈極まる対戦ゲームジャンルに戦いを挑んだ、いや挑み続けるゲーム「Invisigun Heros」を紹介したい。

「Invisigun Heros」はアメリカはロサンゼルスに居を置くSombr Studioが開発した対戦ゲームです。クラウドファンディングサイトKickStarterにて出資を募り、見事目標金額を集め開発されました。ストレッチゴールには届かないギリギリのラインではありましたが、そのゲームシステムに惹かれたゲーマーたちから支持を集めた作品です。
クラウドファンディングでインディーゲームが……というのは結構よく聞くワードです。なんかもう、ありふれちゃった感じですよね。でも、成功している作品がたくさんあるなら、当然失敗している作品もたっくさんあるわけです。なんで、クラウドファンディングを達成しているのはすごいことで、さらにそこからプロジェクトを完成させていることはもっとすごいことなんです。Sombr Studioは「Invisigun Heros」でデビューしたチームですから、これはかなりすごいことなんですよ。

さて、そんなクラウドファンディングを達成させるに至った魅力的な「Invisigun Heros」のゲームコンセプトはズバリ透明!持つものを透明にするInvisigun所持者たちの熱い対戦ゲームなんです。
グリッドベースのステージに最大4人のプレーヤーが配置され、スタートの合図とともに銃を撃ち合い、敵を倒して勝利を目指します。昔ながらの1画面構成で複数人が対戦するバトルアリーナゲームです。ローカル対戦だけでなく、オンラインマルチにも対戦していて、CPUボットも完備。対戦ゲームとしての基盤もしっかりしています。
本作の一番の特徴は、プレーヤーキャラクターがみんな透明であること。どこにだれがいるか、全くわからない状態で戦うこととなります。もちろん、自分のキャラクターさえ、透明で見えない状態で戦います。なんてこった。これではいつまでたっても決着はつかないのでは?

ここで重要になってくるのが、マップオブジェクトです。透明なキャラクターたちですが、なにも幽霊ではありません。当然、物にぶつかってしまうわけです。動けば音だってなります。透明なキャラを操作しているわけですから、想像とは違う場所に動かしてしまうことはしばしば起きてしまいます。そして、壁にガツンとぶつかってしまうわけですよ。本作はオブジェクトにキャラクターがぶつかったとき、ことさら派手にぶつかったことを表示します。そう、ここに誰かいるぞ!とほかのプレーヤーに教えているんです。ほかにも、射撃や固有スキルといったプレーヤーの操作タイミングや、水辺の歩行で足あとが出る環境エフェクトでも居場所がばれてしまいます。敵の居場所を察知し、ぶつかってからの足音や状況から移動先を予測し、透明な自分を的確に操作して敵を撃つ。これがこのゲームの基本となります。か、かっこいい!
昔ながらの1画面構成ながら、1画面構成のもつ全員が同じ情報を得て行動するという特性を最大に活かした作品というわけですね。これは面白いぞとゲーマーがクラウドファンディングに投資したのも頷けます。

遊んでみると、どこにだれがいるのかわからない緊張感と、自キャラの場所と向きを正確に把握しつつ敵の位置を探る頭脳戦にグッときますね。うかつな行動や考え違いで壁にぶつかったときの隙が大きく、しまった!と思ったらもう遅い。見えない敵にバンと撃たれちゃう。ああもう、くやしい! 逆に、自分の読みを成功させて透明な敵を倒したときはほんとうにうれしい! 漁夫の利を狙って敵の争いを眺めたり、あえて姿をさらして敵を引き付けたりするような作戦が決まれば思わず声が出ますね。とっても楽しいゲームです。
……なんですが。このゲームもやっぱり人が少ない! またこのパターンかよ! 慣れてるけどさ! ボクはこのゲームを発売日に購入して、たびたび遊んでいるのですが、マッチングすることなんて、まあないですよね。

考えてみると、その理由はなんとなくわかりました。そうですよ。そもそもこのゲームは端から見たらなにやってるか全然わかんない! なんかこう、ボンバーマンチックなステージが画面に映っているだけで、下手すれば数十秒間なんのアクションもない! 地味!モニター故障したのかって疑う!
対戦ゲームって、こう、見る楽しさもあるわけじゃないですか。eスポーツなんかになってくると、上級者のテクニックやタクティクスを見る楽しみもさらにのってくるわけです。たしかにそのゲームを遊んでいないプレイヤーにはわからないことも多いかもしれませんよ? でも、なんかすごいぞ!と興味を持たせることはできるじゃないですか。
でも、このゲームはコンセプトの時点で画面に何も写さないやつが最強のゲームなんですよ!とすれば、誰が遊んだって遊んでない人にはさっぱりわからない! 上級者同士の戦いとなれば、画面上に一切変化がないスーパーサイレントな戦いが繰り広げられます。冷戦かよ!まるで観戦に向いてない!
ほんとね。ボクはこのゲーム流行ってほしい。面白いもん。もっといっぱい遊びたいんです。今年の6月に日本語が追加されて、これは絶対ブームになるぞと思ったのに、いまいちプレイヤー増えなかったし……。つらい。なんかこう、奇跡が起きねぇかなって起動するたび思ってます。
でもね。ここの開発は本当にエラいんです!ボクはただただ奇跡を願うだけでしたが、開発者はこの問題を解決しようと様々なアップデートを行っているんです。

まず、なにやってるかわからない問題に対して、観戦機能を実装してるんですよ。これは、サーバーに入った状態でゲームに参加しなければ観戦モードになるというもので、観戦モードだとプレーヤーの位置が透明状態でもアイコン表示されわかるようになります。これで観戦者はゲームの流れをつかむことができ、さらにはプレーヤーのテクニックやタクティクスもうかがい知れるわけです。
しかも、このアップデートに合わせて観戦用にもう一つゲームを起動する機能も実装しています。ゲーム配信者が、視聴者に観戦画面を見せたいという要望にもしっかり応えているわけです。考えている! 自身の持つゲームのよくないところをしっかりとフォローしようとしている!

そして、インディー初のマルチ対戦ゲームにありがちな対戦相手がいない問題に直接リーチする要素が「Invisigun Heros Free Guest Edition」です。Steamにはゲームの体験版を配布する機能が備わっていますが、本作はこの機能を用いて機能限定したゲーム本体を配布します。それが「Invisigun Heros Free Guest Edition」なんですが、これが一部のプレイヤーキャラクターやステージは選べないけれどローカル・オンライン対戦を自由に遊べるというとんでもない体験版なんですよ。
つまりですね。対戦ゲームを買ったけれど、お友だちがだーれも持っていない。なんてよくある状況でも、本作なら「Invisigun Heros Free Guest Edition」をお友だちにインストールしてもらえば遊べてしまうんです。3DSのおすそわけ機能をSteamに持ってきたような、それでいておすそ分け同士でも対戦ができてしまう、そんな大盤振る舞いな体験版なんです。すげぇ! 身も蓋もねぇ人口増加手段だ! これを知っちゃったらもう読者の皆さんはインストールしちゃうでしょ?今週末の花金(11/3)はどっぷりInvisigun Herosに浸っちゃうでしょ?それぐらいすごい施策なんですよ。あ、それを見越してボク待ってますんで、みんなよろしくな!23時ぐらいな!

こういう自分たちのゲームの良さをもっともっと広めようとする努力は、ほんとすばらしいですね。後々わかった問題点や、ユーザーを増やすために必要なことに真摯に取り組む作品は、もっともっと評価されてともすれば流行ってほしいです。そして、真摯にアップデートを行う開発チームも、もっともっと称賛されるべきです。アップデートだってタダではできんわけですから、そこをおろそかにしない開発を誉めないで何を誉めますか!?
とまあそんな感じで、積極的なアップデートでユーザーの心をつかもうと戦い続けているのが「Invisigun Heros」です。いやーぜひですね、もっと流行ってほしい。もうね。ボットと腹の探り合いをするのはやめにしたいんですよ。生きた人間を出し抜いてこそ、ボクは勝利の美酒に酔えるんです。このゲームが日本において、透明のまま消えてしまうのは惜しい。ぜひ、みなさんも本作を遊んでみてください。後ろからズドンと撃ち殺してあげますから。