バンダイナムコエンターテインメントとグランゼーラは10月19日にSFサバイバル・アクションアドベンチャーゲーム「巨影都市」の発売を予定している。
本作は「ウルトラマン」シリーズ、「エヴァンゲリオン」シリーズ、「ガメラ」シリーズ、「機動警察パトレイバー」シリーズ、「ゴジラ」シリーズから登場する巨大ヒーロー、巨大生物が街中に現れた際、主人公の一般市民はどのようにして生き延びることが出来るのかというサバイバル・アクションアドベンチャーゲームとなっている。
本作の開発は「絶体絶命都市」シリーズの九条一馬氏が率いるグランゼーラが手がけ、本作のPVを観てもわかるように「絶体絶命都市」シリーズのDNAが随所にみられる。今回のTGSで、九条一馬氏とバンダイナムコエンターテインメントの塚中健介氏の両名にインタビューを申し込み、本作制作の経緯と意気込みを伺った。
――最初に本作の制作に至ったきっかけと経緯を教えていただけますか?
塚中:グランゼーラさんが設立される前から、我々側から何か一緒にお仕事できないかなと思っておりまして、企画コンセプトのお話をしました。その後、九条さんから出していただいた企画書が「巨影都市」の原案だったんです。もう8年前くらいになりますね。
九条:あの時は新聞記者が主人公で写真を撮るとかそういう案でしたね。
塚中:最初はジャーナリストが災害のあった街に赴いてベストショットを撮りに行くというものでしたね。「巨影都市」には各ステージをクリアした後にニュースサイト風のクリア結果画面が表示されるのですが、プレイヤーの行動によって記事が掲載され、コレクションされるという機能があります。これは、企画原案の設定の面影ですね。その当時は、うまくプロジェクトが成立しなかったのですが、九条さんがグランゼーラを立ち上げられた時にもう一度何かできないかなと思って話を持ちかけたんです。それから改めてプロジェクトを立ち上げましょうということになって、「巨影都市」の草案にたどり着いたんです。その頃から特撮作品の人々が逃げ惑うワンシーンのいち人間になろうというコンセプトから固まって、特撮作品を始めロボット作品でも同様のシーンがあれば採用するという形でラインナップが決まっていったという感じですね。
――今回の制作でボツになったものってありますか?
塚中:ボツは無いですね。そもそも「キャラクター数=制作物量」という部分とステージクリア型のゲーム故にそのステージに登場するキャラクターはそれぞれの作品からという形なのでステージを積み上げていったら1本のゲームのボリュームになるのでそういった事はありませんでした。
九条:そもそも主人公は原作に登場するような特務機関の存在は知らないし、「科学特捜隊」に知り合いもいない、そして巨大な存在に対する名前も知らないという状況で、後からネットのニュースで誰かがこう呼んでいたという事で知るという風になっています。
――確かに巨大な物体が襲ってきた時どうするのかというシミュレーションに徹底されているんですね。
九条:そうです、ですから元の作品を知らなくても普通に楽しめるようになっていると思います。知らない人は寧ろ巨大な何かがドーンとそこに現れたらこうなるんだなと新鮮な気持ちになってゲームを楽しんでいただけるのではないでしょうか?
知っていれば知っていたであの作品のこのシチュエーションがアイデアになっているんだと推測していただくような楽しみ方もあるかもしれません。
――クリア後に何か用意されているという事はあるんでしょうか。
塚中:クリア後に何かの特典がアンロックされるということはないのですが、クリア結果画面に掲載される記事はプレイヤーの行動によって掲載されますので、それらをコレクションしていただいたり、巨影コインの収集によって購入できる衣装やアクセサリーもありますので、ぜひ周回プレイにチャレンジしていただけたらと考えています。
――追加要素に関連してお伺いしたいのですが、DLCの予定とかはありますか?
塚中:現時点ではDLCについては考えておりません。パッケージ版もしくはダウンロード版一本で主人公のストーリーは完結するという作りにしています。
――失礼を承知でお伺いしますが、九条さんの年齢でこの様な作品を扱うにはスタッフと年齢のギャップがあったのではないでしょうか?
九条:スタッフとギャップが有りましたね。スタッフはウルトラマンのマスクが3種類あったのも知らないくらいなんです。彼らは「ウルトラマンティガ」の世代なんです。
――それで今回ティガが選ばれたんですね。
塚中:ウルトラマンティガを登場させようという提案は我々からお願いしました。またそのシチュエーションはどれにしようかと考えていたところ、「キリエロイドII」をグランゼーラさん側から提案していただきました。確かにキリエロイドIIはウルトラマンティガの劇中でも複数回登場しておりましたし、印象深いシーンでもありましたので採用しました。登場する作品やキャラクターについては、皆さんの中にもいろいろなご意見があるかと思いますのでご説明しますと「原作のシチュエーションで印象的なシーンを登場させたい」ということから選ばせていただきました。
九条:あんまり脈略とかは考えていなくて表現したいシーンを選んで「どうですか?」って進めていった感じですね。
塚中:ザラブ星人は、その後のシリーズにもたびたび登場するので認知度が高いと思うのですが、印象の強いキャラクターですとゼットンやバルタン星人などもいます。でも人間の視点から見たときに、「ウルトラマン」と「にせウルトラマン」が戦っているシーンは、ものすごく印象的に映るだろうという考え方もありまして、シチュエーションを重視して、登場キャラクターを選定いたしました。
――継続的にシリーズ展開は考えていらっしゃいますか?
塚中:色々先々の展開は考えられると思いますが、とりあえず現在は作り切ったところなので開発中には先の構想をしている場合じゃなかったですね。
――これは着眼点とアイディアが良いゲームなので成功すれば10年20年続く作品だなと思いました。
塚中:本当に数々の登場作品をお借りしながら、大変贅沢な取り扱い方をさせていただけたなと思いますね。本来ならばウルトラマンを操作する、イングラム1号機やエヴァ初号機に搭乗するようなゲームの方がオーソドックスな作り方だと思います。ところが本作ではウルトラマンが守ってくれたりしている中、主人公は彼らに関われない。なぜなら主人公はただの一般市民で能動的に各原作のストーリーを進める立場でもないからです。それらのシチュエーションの一瞬一瞬を切り抜いて登場作品をまるで背景のように扱わせていただいている贅沢な仕様です。だからこそ本作のコンセプトを版権元各社の皆様にご理解いただけたのは非常にありがたいことだと思います。
九条:このステージだとキャラクターの足元しか見えないという部分が本作には多々ありますが、だからといってカメラを上に向けて全体を見せるという事はしたくなかったんです。本来ならキャラクターを使わせていただいているのだからしっかりと見せて、その登場作品のキャラクターを期待しているお客さんに満足していただくというのが筋なんでしょう。しかし、現実ならゴジラの足元をバイクで走り抜ける際、顔のカットは挟みようがないと思うんです。それでも見たいならプレイヤーがビルの上に上ってそこからじゃないと怪獣の全景が見えないという様にしないと本作のコンセプトからずれちゃいます。TGSで特別体験版を試遊された方の中には主観カメラで一生懸命対象を見ようと試みた結果、にせウルトラマンに踏まれてしまうという方もいらっしゃいました。
――欲を言えば緊急時なのにスマホで動画撮影をして怪獣たちに踏み潰されたり、撮った動画、写真を投稿するとかあれば楽しいと思います。
塚中:今作はPS4のシェア機能に対応しておりまして、先程申し上げたクリア結果画面のニュースクリップなどをシェアすることが出来ます。
九条:自分が逃げている瞬間が記事になっていたりもするんですよ。他にも見切れて映っていたり、男性主人公でもセーラー服を着ていたりとその辺を含めた遊び要素も用意しています。制作時もスタッフから見切れていることが問題にも上がったんですが、それでも良いとしました。
――今作の開発期間は最終的にどれくらいだったんでしょうか?
塚中:構想から行くと相当かかってますが、声優さんの収録やキャスティングが3年位前に決まってそこからアフレコを2回3回に分けているので実質3年位ですかね。
九条:最初僕の中では「絶体絶命都市」と同じ感覚で作れば大丈夫かなと思っていたんですが、予想に反して別物だと気付いて苦労しましたね。だからこそ作っていて新鮮味もありましたし、改めてゲームづくりの面白さに気づかされましたね。懸命に作ってきて今あらためて見てみると変わった、いや独特なゲームになったと思います。
塚中:そう考えると今作は新しい切り口のタイトルとして完成できたと思います。
――最初はPS Vita、PS4での制作が予定されていて、ある時からPS4のみになったんですが、それはPS Vitaのソフトカードの容量やグラフィックでの問題でしょうか?
塚中:ハードの変更はスペックの問題ではなくPS4にクオリティの軸足を持たせて注力したかったためです。
――最後に本作に期待している、または購入を検討している方へメッセージをお願いします。
九条:今作をプレイすることで逃げ惑う視点で怪獣やヒーローたちを見ると今までの特撮やアニメも変わった視点で観ることが出来るんじゃないかなと思いますし、もどかしさも感じることがあるかもしれません。しかしそれも含めて「巨影都市」っていうゲームなんでそれを感じていただけたらと思います。
塚中:多くの皆様に楽しんでいただけたらうれしいです。今回はこの様なコンセプトに基づいて登場作品を扱わせていただき「巨影都市」というタイトルが誕生しましたが、これが全ての特撮作品やアニメ作品のゲーム表現としての答えだとは思いませんし、あくまで多くの考えの中の1つだと思っています。他にも違った描き方やアプローチの仕方もあると思いますが、今回は「逃げゲー」というコンセプトの本作をぜひ楽しんでいただいて、色んな意見をいただけたらなと思います。