以下に「ゲーム・オブ・スローンズ」シーズン7最終話「竜と狼」のネタバレが含まれる。
「竜と狼」は約80分と、ほとんど長編映画並の長さだった。驚くべきことではないが、シリーズ史上最長のエピソードはキャラクター同士の対話をメインとしたエピソードでもあった。殺されたキャラクターや決着がついたストーリーの数もあり、「ゲーム・オブ・スローンズ」の物語は以前ほど大陸のあちこちに散らばっておらず、1つのエピソードで登場するロケーションは最大4箇所くらいだ。これまでのシーズンでは、1つのエピソードで5~8箇所のロケーションが登場するのが常だった。
それが今、あらゆるものが省略され、広大だった世界は縮小された。ウェスタロスを巡る2つの勢力が集い、デナーリスとサーセイが初めて顔を突き合わせたシーズンフィナーレでも同じことが言える。ポドリックとティリオン、ブライエニーとジェイミーなど、再会という意味でも盛り沢山のエピソードだったが、ひとまずは衝撃的なエンディングから始めよう。
エピソードが〈亡者〉と〈冥夜の守り人〉の戦闘シーンで終わると思った瞬間、ドラゴンに乗った〈夜の王〉が舞い降り、イーストウォッチの〈壁〉を破壊した。何百年もの間、ウェスタロスを守ってきた〈壁〉が崩れ落ちるシーンは、今シーズンを締めくくる方法としては素晴らしく、このエンディングではトアマンドとベリックが死んでしまったようにも見える。2人がまだ残っている〈壁〉に飛び移ったのなら別だが、その可能性は低いようにも見える。
シーズン7のエンディングとして、〈壁〉が崩れ落ちるイメージはずっと頭の中にあったが、どのようにしてそれが起きるのかは先週の「壁の向こう」が放送されるまではわからなかった。壁の一部が崩壊し、〈亡者〉の軍団が北部に侵入するシーンは、目を見張るようなスペクタクルだった。
その直前のシーンでは、ブランがサムにジョンの出自を明かす。シーズン8までこの秘密を引っ張るはずはなかったので、これもある程度は予想ができたことだ。ファンはずっとこの瞬間を待ち望んでいただけでなく、ジョンとダニーは明らかにお互いを意識して始めていた。「R+L=J」(レイガー・ターガリエン+リアナ・スターク=ジョン・スノウ)という説はシリーズが始まる前から原作ファンの間で囁かれており、問題は「明かすかどうか」ではなく、「どのように明かすのか」という点だった。
制作陣の答えは、ジョンが〈鉄の玉座〉の正当な後継者(“サンド”ではなく)であることを明かし、同時にジョンとダニーの親密なシーンを見せるというものだった。もう引き返すことはできない。これから先、どこかの時点で彼らは自分たちが叔母と甥であることに気がつくはずだ。そして、その時、ダニーが妊娠しているという可能性もある。さらに畳み掛けるように、ジョンの本当の名前がエイゴン・ターガリエンだということが判明した。
これは複数のレベルで興味深い。まず、ジョンは異母兄弟の名前をとって名付けられたということ。エイゴンというのは、レイガー・ターガリエンとエリア・マーテルとの間に生まれた長男の名前でもある(マウンテンが殺した赤子だ)。ということは、レイガーはこの名前が相当気に入っていて、エイゴンという名前の息子がどうしても欲しかった。しかし、それはエリアとの子供ではなく、彼が本当に愛した女性との子供であって欲しかった、ということなのだろうか? 第二に、エイゴンは原作の中ではまだ生きていて、〈鉄の玉座〉の権利を有している、という点だ。
ほとんどの視聴者がすでに知っている情報であることから、どのような形で描くかが焦点となっていたこのシーン。〈鉄の玉座〉への権利という意味で物事を複雑にする要素を付け足し、タイムトラベルとブランのナレーション、ベッドシーンを交えたやり方は非常に巧妙で、ビジュアル的にも印象深かった。

時間をもう少し遡ろう……サーセイが誓いを破るのを見て、私は安心した。妊娠の事実が彼女を変え、サーセイが本当に味方になるというのも、シリーズが進んでいく方法としてはあり得たかもしれないが、しっくりはこなかったはずだ。少なくとも、完全には。同じようにユーロンが逃げていくのを許すのも、サーセイらしくなかった。このエピソードには、納得がいかないシーンがいくつかあったが、サーセイの嘘が全てを説明してくれた。
そう、ゾンビを見せられたからといって、ユーロンが即座に逃げ出すことを決意するのは嘘くさい。そして、サーセイがダニーと共に戦うことを宣言するのは、美しい展開かもしれないが、「世界で最も凶悪な女」というサーセイのキャラクターに合っていない。そしてティリオンの目の前でお腹に手を当てるというのも、少しあからさまだ。だが、彼女は全員を騙していた。サーセイがティリオンをすぐさま殺さなかった理由は、休戦という嘘を作り上げるためだったのだ。彼女はこのままずっと悪賢く、冷酷なままでいるのだろう。
しかし、キングス・ランディングに雪が降り、壁が崩れ落ちたその時にサーセイが裏切るというのは、なんてタイミングが悪いのだろう。少なくとも、彼女の不誠実さはジェイミーが姉の元をついに離れることに繋がった。サーセイはもう少しでジェイミーをマウンテンに殺させるところだった。もし、ブライエニーが今回のシーズンで何らかの役割をもっていたとしたら、ドラゴン・ピットでジェイミーに訴えかけ、ジェイミーの心を動かしたように見えたことだろう。
ウィンターフェルに移ろう。姉妹間のゴタゴタには考えられるかぎり最良の結末がもたらされた。アリアはリトルフィンガーを騙すための演技をしているように見えたが(あのやる気のない隠れ方を見よ)、サンサは不確定の要素であり続けた。彼女は正気に返り、リトルフィンガーの本性に気がつくのか、それともサンサとアリアは最初から共謀していたのか? 結局のところ、スタークは結束し、毒を追い出したのだった。リトルフィンガーの破滅は、なんて快いシーンだったことだろう。
というのも、残念ながら「ゲーム・オブ・スローンズ」で生き残ったキャラクターの多くは「お約束」という名のアーマーを着けていて、誰でも死にかねない日々には終止符が打たれた。トアマンドにしても、ブライエニーと再会しなければならないため、生かされている可能性はあるし、ジェンドリーとアリアはお互いに再会しなければならないため、安全が保証されているといってもいいかもしれない。これまでの「ゲーム・オブ・スローンズ」は予想された展開を裏切り、愛されるキャラクターを容赦なく殺す傾向にあった。しかし、「ゲーム・オブ・スローンズ」は今、より従来の形のTV番組になったと言える。
リトルフィンガーの死は派手なシーンだったが、トラディショナルなものであり、「ゲーム・オブ・スローンズ」風の死ではなかった。これまで嘘つきや陰謀家に勝利を与えてきた「ゲーム・オブ・スローンズ」において、悪役がこれまでの悪行の責任を問われ、処刑されるのは珍しい。
とはいえ、ものの数分でショックから絶望への動きを表現してみせたエイダン・ギレンの演技は絶妙だった。これまで「ゲーム・オブ・スローンズ」では、悪役が企んでいる姿が描かれることはなかったが、今回、我々はスターク姉妹が共謀する姿を見なかった。どこかのタイミングで彼らはブランの元に行き、リトルフィンガーの罪を知ったはずだ。もしかしたら、最初に彼らが神の森で集まったシーンから、共謀は始まっていたのかもしれない。その直後に、アリアはブライエニーとこれ見よがしにトレーニングを始めたのだから。