豊富なゲームモードとリアルな車の挙動が売りのシリーズ最新作がついに登場した。1度アシストを解除すれば、ストイックなまでのリアルな駆動でダート系のゲームファンを熱狂させた。ラリーはもちろん、バギーやラリークロスといった人気ダート系レースを集めた注目のレースゲームだ。

「DiRT Rally」で多くのプレイヤーをうならせた非常にシビアな挙動は若干マイルドになったが、それでもシミュレーターモードでは一部を除いて初心者を寄せつけない高い難易度を誇る。特に後輪駆動の車は制御が難しく、ハンコンを使っても完走するので手一杯だ。そこでまずは、本作の挙動について話をしていこう。

DiRT 4

誰をターゲットにしているのかわからない車の挙動

車の挙動はオプションで「ゲーマー」と「シミュレーション」の2通りの設定を選べる。前者はコントローラーでも「このへんはドリフト!」という大雑把なイメージでも車のコントロールを決めやすく、もっとも操作がシビアな車でも、気楽にそれっぽい走りを楽しめるバランスとなっている。

アクセルワークなどをかなり的確な領域に持っていく必要があるため、「ドリフトで攻める」ことを考えると逆に難易度が高い

一方「シミュレーション」に関しては評価する以前の問題が多い。まず全体的にハイグリップで普通に走る分には簡単なのだが、それが逆に上級者には戸惑いになる。また、設定を問わず駆動方式によって極端に挙動が違い、「FWD」の場合はサイドブレーキを使ってもそれを放せば一瞬(時間にして0.5秒ほど)で回復する強烈なグリップ感がある。「4WD」ではなんとかドリフトに持っていけるが、いずれにせよコーナーで滑らかにドリフトを発生させるには、速度、荷重移動、アクセルワークなどをかなり的確な領域に持っていく必要があるため、「ドリフトで攻める」ことを考えると逆に難易度が高い印象だ。

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特にFWDではスピンとは無縁のハイグリップ仕様で、ダートに慣れていると逆に難しい

このハイグリップ仕様は、ライトユーザーを意識したバランスに変更されたのかと思いきや、雨のラリーでは高速走行時に車がアメンボのように水たまりで浮いてしまうハイドロプレーニングが至るところで発生し、姿勢を維持するだけでも困難。晴れでもバギーやトラックでは「真っ直ぐ走るだけで精一杯!」と言いたくなるほどのシビアな挙動も存在する。好みもあるので筆者はぶっちゃけ挙動はリアルでも何でも構わないが、ひとつのモード内でもここまでバランスがかけ離れるのは論外だ。

起伏に富んだコースが熱い「RALLY」&名車の祭典「HISTORIC RALLY」

「RALLY」モードはWRCがベースに作られており、スノー、ダート、舗装路など、5つの国毎の特色あるシチュエーションを収録している。そして「HISTORIC RALLY」は、かつての名車を使ったイベントが収録されたクラシックモードだ。シチュエーションは少ないがステージの数自体は多め。それを可能にしているのは、キャンペーンステージも含めて自動生成をベースにして作られたコースで、これが本作の長所でもあり短所にもなっている。

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路面の起伏は激しく、国によって若干個性もあるので、最初は自動生成と気づかないだろう

長所は紛れもなくコース数の多さにある。加えてシリーズ初の機能「Your Stage」では、ボタンひとつでオリジナルラリーコースを自動生成できる。そのコースをイベントのステージとして複数組み合わせることで、自分だけのオリジナルチャンピオンシップを作って無限に楽しめる。豊かなラリーイベントを含め、オンラインイベントも定期的に配信されており、長く楽しめるのが魅力だ。

プロドライバーのようにナビに従ってコースをギリギリまで攻める楽しさを得られるかどうかで評価が大きく変わる

短所は、ヘアピンなどコーナー毎のバリエーションが少なく、似たような曲がりのコーナーが目につくことだ。ほかにも「右4vlg>(ベリーロングタイトゥン)」……要は長く曲がりが一定ではない複雑なコーナーなどが少ないため、生粋のラリーファンには物足りなく感じ、特に細部の調整ができないメイキングコースでその傾向が強くなる。

とはいえ、いずれの長所と短所も紙一重で、特に自分で作ったオリジナルコースは「同じコーナーの繰り返し?」と感じるほど露骨に自動生成とわかる場面に遭遇しやすい代わりに、「右3」のコーナーなら寸分違わずその角度のコーナーがやってくるため、「コ・ドライバー」のナビの信頼性が非常に高く、プロドライバーのようにナビに従ってコースをギリギリまで攻める楽しさを得られるかどうかで評価が大きく変わる。

多少パターンはあるものの、いつでも新しいコースを走れるのは楽しい

またアンジュレーションなど路面の縦の変化の表現力が豊かで、走っていて1秒先で何が起きるかわからない歯ごたえはあるため、コーナーの種類自体や道幅の変化などは単調だが、レイアウト全体では以外と本格的なラリーを楽しめる。それはサウンドやグラフィック面でも言えることで、時間や天候によるライティングの変化も素晴らしく、飛び跳ねたドロによる車の汚れ方も自然で、汚れまくっている車を美しいと感じるほどだ。

ラリーの雰囲気作りも申し分ない。雨の日の次のレースは晴天でも路面は泥だらけで、極まれに小動物が車の前を横切るなど、映像で見たことがあるような場面もぬかりない。ただ一点、濃すぎる濃霧を除いては……。これはこのゲーム限ったことではないのだが、ラリーゲームの濃霧は極限を再現するにせよ加減知らずで、筆者的にラリーゲームの七不思議のひとつと捉えている。

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キャンペーンでは、雨の翌日の路面が泥だらけの場合も

バギーやトラックを乗り回す「LAND RUSH」&特殊ルールの「RALLYCROSS」

LAND RUSHは、前作のヒルクライムと入れ替わりで収録となった、バギーやトラックに乗り込んで専用の周回コースを走るダートレースだ。コースは2~3周もすれば覚えられるほどシンプルで、手軽に遊ぶことができる、とも言い切れない。まず車のほとんどが後輪駆動で、勝負以前にまともに走れるようになるまでが難しい。じゃじゃ馬を扱うコツがわかってくるとおもしろさのレベルが変わってくるが、それはハンコンでのプレイの話なので、プレイヤーのスキルも含めて状況に合わせてアシストを上手く使う必要がある。

大ジャンプポイント後、相手に乗り上げてしまうことも多いが、その激しさがこのレースの醍醐味だ

また難易度に拍車をかけているのが、予選・決勝ともに8台同時走行によるダートレースでの勝負だ。しかもドリフトによる走行で車が流れることが多いため、それにより激しい接触が多発し格闘色の強いレースになることもしばしば。特に1度順位が後ろに下がると、前方の車の激しい土煙で前が見えなくなるため、大ジャンプポイント後、相手に乗り上げてしまうことも多いが、その激しさがこのレースの醍醐味だ。

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シミュで慣れるには、1周36秒ほどのコースを最低100周する覚悟がいる

一方、RALLYCROSSも専用周回コースで8台による予選・決勝が行われるが、その基本ルールは少々異なる。最大の特徴は、コースの一部にジョーカーゾーンと呼ばれる遠回りの分岐が設置されていることだ。各レースでは1度そのジョーカーゾーンを走行することが義務付けされ、路面も舗装路とダートが混在しているなど、総合的なドライビングスキルも求められる。

もちろんレースの醍醐味はやはりジョーカー。特にスタート時からの状況によって、ジョーカーを通過するタイミングを戦略的に変更するのが重要で、最後にゴールするまで自分の正確な順位がわからないドキドキ感が最高におもしろい。また、ジョーカーの合流地点はタイミング次第で接触事故が避けられず、緊張感がたまらない。

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コース右側の緑のエリアがジョーカーゾーン。

ちなみにこれら2つのモードでは、「コ・ドライバー」の代わりに「スポッター」と呼ばれる相棒がレース状況の情報を教えてくれる。しかし「後方の車と何秒差?」といった本当にほしい情報がなかなか得られない。一応ライバルが横に並んだ場合に注意を促してくれる部分は評価に値するが、基本的には雰囲気だけの存在だ。

充実したゲームモードと作り込みで、日本人好みのゲーム性

多彩なレースを楽しめる本作だが、筆者的にはキャリアモードでコツコツと、マシンやチーム全体を強化するチーム運営要素がお気に入りだ。しかし、その内容は格別深くないため、面倒に感じるプレイヤーもいそうで意見がわかれそうな感じだ。

キャリアモードでの大まかな流れは、初めにフリードライバーとして既存のチームからレースへスポット参戦し、ある程度の資金を蓄えてから自分のチームを持って戦っていくのが基本的な流れだ。またチームを持ったとしても他のチームから参戦可能なので、チーム管理が面倒に感じたプレイヤーや、資金に乏しくよい車を揃えられない間は、スポット参戦を続けるのがよいだろう。

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こだわりがなければ、ドライバーとしてプレイに集中しても問題ない

なにせチーム立ち上げ直後は、車両、施設、チームスタッフ、スポンサーなどなど、あらゆる面で戦力が乏しい状態にある。そのため、仮に車両を購入しても、車にアップデートを施すまで勝利できるレースが限られ、その要素に気づかないと「あれ、自分こんなに下手だったっけ……」と落ち込むのは必至。ただ車のアップデートは、具体的な数値の変化などの目に見える形で提示されないためはじめは疎かにしやすい。

中小チームから這い上がるのにコツコツ実績を積み重ねる必要がある

また車を最大までアップデートするには、関連施設を最大までアップデートする必要があり、それを行うには自身のランキングを一定以上まで上げる必要がある……と、中小チームから這い上がるのにコツコツ実績を積み重ねる必要がある。一見面倒に感じる流れだが、弱小状態でも腕次第で上位カテゴリーでも一定の勝負ができるため、面倒な要素ではあるがその基本は日本人好みで楽しみやすいシステムだと思う。

唯一管理関係で面倒に感じるのは人事とスポンサーの契約だ。序盤はすぐにスポンサー契約が切れてしまい、管理画面で再契約をする必要もあるのだが、それにはちょっとロードが長めの「チームカスタマイズ」へ飛ぶ必要があるため、スポンサー契約も簡易画面を用意してほしかった。ちなみにスポンサーの資金は、レース前に提示された順位などの条件を満たすことで獲得できるクエスト風で、ゲーム性の味付けにもなっている。

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スポンサー画面では車のメインカラーなどもカスタマイズ可能だ

またどんなゲームにも言えることだが、一旦施設のアップデートが一段落してしまえば運営面でやることがなくなる。そのこと自体は仕方がないのだが、スタッフやスポンサーなどとの再契約の手間だけが残ることが予想されるため、今後全体的なもう一工夫が必要だろう。

ちなみにコ・ドライバーの人材毎に、日本語、英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語など使う言語が異なり、英語のみ女性コ・ドライバーも存在する。そして何より、伝説のラリードライバー「コリン・マクレー」をナビゲートした「ニッキー・グリスト」も指定できるのは、ファンにとってはたまらない。それを見ると非常に難しい話だが、日本人コ・ドライバー石田裕一選手の気配りを含めたナビをいつの日か再現してほしいと思ってしまう。

少し独特のイントネーションだが聞きやすく、ノートにとらわれない状況に応じたナビも心強い

「DiRT 4」というタイトル

ナンバリングによって変化の激しいシリーズだが、残念ながら一番重要な要素のひとつである車の挙動が定まっていない。せっかくのチーム運営要素も、徐々に強くなっていくチームを見ていくのは楽しい要素だが、直接やることは資金を投入して施設を拡張することだけと、PS1時代から続く長いシリーズだが、荒削りな部分が多い。

しかしオフラインのキャンペーンが充実しており、それをすべてクリアしてもフリープレイでチャンピオンシップを自分で作り無限に楽しむことができる。グラフィックやサウンドのクオリティも申し分なく、核となるラリーの激しさなどもしっかり表現。

オンラインは大きくわけて、デイリー、ウィークリー、マンスリーでイベントが更新されるコンペティションと、最大8人による様々な対戦ができるセッションの2種類があるが、「RALLY」のタイムアタックで、自動生成を生かしたぶっつけ本番のコースで競い合うのが本作最大の醍醐味と言えるだろう。