以下に「ゲーム・オブ・スローンズ」シーズン7第5話「イーストウォッチ」のネタバレが含まれる。
「イーストウォッチ」はアクションが切れ目なく続いていたシーズン7において一呼吸つけるエピソードとなったが、展開がもたつくことはなかった。巧みに様々な要素を詰め込んだ本エピソードでは、1つ1つのシーンに驚くような瞬間が用意されていた。登場人物の過去は自然かつ意味のある形で現在と繋がり、物語はさらに深まっていく。
サムがシーズン3でブランに出会ったことに触れたり、ジェンドリーがようやくシリーズに戻り、ジョラ―とデナーリスが再会するなど、今回のエピソードでは過去の伏線が次々と回収されていった。サムとジリとの短いシーンにすら、ジョンが私生児ではないことを示唆する重要な情報が隠されていた。
ジリはレイガー・ターガリエンがエリア・マーテルとの婚姻を無効にし、ドーンで人知れずリアナと合法に結婚していたことに言及する。ジリはレイガーの名前(読み方を間違えていた)にしか触れていないが、視聴者はすぐに隠された重要な意味に気がついたことだろう。

レイガーとジョンの繋がりを知らないサムはジリに耳を貸さなかったが、頭のどこかにはこの情報が残っているはずだ。また、本エピソードでは、シーズン1~7の間に何年もの月日が経っていることが改めて明らかになった。サムは年を重ねており、ブランに出会ったのは「何年も前」であると話す。過去2シーズンで時間の経過はこれまで以上に加速しており、1エピソードの間に数カ月が経過することもある。本エピソードの終わりにはジョン、ジョラー、ジェンドリー、ダヴォスがイーストウォッチに辿り着いているが、イーストウォッチまでの道のりは最短でも船で数週間はかかったはずだ。
では、本エピソードはサーセイとデナーリスの戦いという点において、どのような意味をもつのだろうか。実際、今回のエピソードはちょっとした変化球だった。今シーズンが終わる頃にはサーセイが玉座を失うことになるのではと予想したファンは多かったが、それもわからなくなってきた。デナーリスとジョンは死の軍団と戦うために休戦の道を探っている。
これはサーセイやジェイミーがダニーの障害ではなく、〈夜の王〉との戦いにおいてジョンや北部を援助する可能性があることを示唆しているのかもしれない。敵対する勢力が〈亡者〉の軍団と戦うために、手を組むことになったら、胸が熱くなるような展開だ。「イーストウォッチ」ではそのための土台が整えられた。
エピソードの終わりで〈壁〉の外に出ていった男たちも(まるでウェスタロスのアベンジャーズのような風格だった)、初めはお互いに敵愾心を抱いていた――野人たちはモーモント家を、バラシオン家の私生児は〈光の王〉を憎んでいた。しかし、〈亡者〉を捕獲するという一つの目的の元、彼らは肩を並べ、荒れ狂う吹雪の中に足を踏み入れた。人々をまとめるのは、ジョンが最も得意とすることだ。〈冥夜の守り人〉のバラバラだった兵士たちを団結させたり、野人との同盟を実現させたりと、人々を結びつけることにかけてはジョンは天才的と言える。彼は私生児であることで低く見られがちだが、2つの偉大な一族の血筋を受け継ぐにふさわしい才覚を持っていることが再び証明された。
人々を結びつけることに加え、ジョンはイングリットにデナーリスと、硬い意志をもった女性の心を溶かすこともできるようだ。彼の勇気と民を守るためなら何でもするという強い意志は、デナーリスに強烈な印象を与えている。ドロゴンをなでている姿や、〈壁〉の向こうに行く遠征隊の指揮官に名乗りをあげたジョンを見るデナーリスは、明らかに彼に惹かれているようだ。
ティリオンがデナーリスへの忠誠心と、同胞が生きたまま焼かれる姿を見たくないという気持ちで引き裂かれる様子も実に興味深い。このことによってティリオンがデナーリスを見限ることはないが、デナーリスがどういった点で父親に似ていて、他の点では似ていないのかを見せる良いシーンだった。斬首刑は少なくとも素早く、痛みのない死だが、人を焼き殺すのは苦痛に満ちた非人道的な処刑方法だ。だからこそ〈狂王〉はこの方法を好んだ。
その一方で、サーセイが圧倒的に不利な状況を乗り越え、新たな子供と共に、ジェイミーと長く幸せな人生を送って欲しいと願う気持ちも、どこかにはある。彼らの長年の秘密は、「ゲーム・オブ・スローンズ」の物語が始まるきっかけになった出来事の一つだった。ブランの命を狙った短剣の方に注目が集まりがちだが、そもそもブランを窓から突き落とし、地獄の扉を開けたのはジェイミーだった。
リトルフィンガーはサンサとアリアの間に存在する微かな敵意を利用しようとしているようだ。彼はネッド・スタークが処刑された後、サンサが無理やり書かされた手紙をアリアに読ませることで、2人の仲を徹底的に裂こうとしている。
アリアとサンサは手遅れになる前にリトルフィンガーの陰謀に気がつくことができるのだろうか? どうやら今回、スターク姉妹はリトルフィンガーに先手を取られてしまったように見える。一匹狼のアリアがどうなるか心配になるが、スターク家(ブランもこの中に入れておこう)が団結することができれば勝機はある。
いつもながらに「ゲーム・オブ・スローンズ」はキャラクターの複雑な心の動きを見せるという点で、非常に優れた番組だ。七王国を巡る戦いに善悪をつけることはできず、サンサとアリアの関係性はかつてないほど緊迫している。アリアは依然として誰よりも優位に立ちたがるサンサに憤りを感じているようだ。もしかしたら、マイカーが殺されることになった顛末を未だに恨んでいるのかもしれない。
私は個人的にアリアが愚か者にならないことを願っている。彼女がこれまで乗り越えてきたことを思えば、彼女はもっと賢いはずだ。一番望ましい展開は、サンサとアリアがリトルフィンガーを陥れるためにちょっとした小芝居をしているということだが、どうだろう。様子を見よう。